草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
大野雄大と菅野智之の一騎打ち? 沢村賞争い、「完投」は短縮シーズンで重視されるか
posted2020/11/10 11:05
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
その昔、沢村栄治賞受賞の一報を受けた投手に、こっそり質問されたことがある。
「沢村賞って何ですか?」
筆者は「日本のサイ・ヤング賞ってところでしょうか」と答えた。すると、その会話を横で聞いていたベテラン投手にこう突っ込まれた。「沢村賞を知らないやつに、サイ・ヤング賞がわかるわけないでしょうが」。その場は笑いに包まれたが、いまだに訂正しそびれていることがある。
沢村賞の制定は1947年。サイ・ヤング賞は1956年。「メジャーリーグの沢村賞がサイ・ヤング賞」かと言われれば、それも違うのだが、ともかく歴史は沢村賞の方が古い。ついでに違いを言えばア・ナ両リーグからそれぞれ選ばれ、先発、リリーフどちらでもかまわないのがサイ・ヤング賞で、両リーグから原則1人(2人受賞年もある)で、先発タイプに限られているのが沢村賞。そして、サイ・ヤング賞は記者投票で決まり、沢村賞は選考委員会が選出する。
2020年度沢村賞の選考が興味深い。ファンには広く知られていることだが、7項目からなる選考基準がある。順にクリアしている投手名を紹介する(11月8日現在)。
選考基準とクリアしている投手
【登板25試合】
達成者なし。最多はザック・ニール(西武)、西勇輝(阪神)の21試合
【10完投】
大野雄大(中日)の10
【15勝】
達成者なし。ただし、14勝の菅野智之(巨人)が登板を残しており、可能性あり
【200イニング】
到達者なし。最多は大野の148回3分の2
【150奪三振】
到達者なし。最多は千賀滉大(ソフトバンク)、山本由伸(オリックス)の149、次が大野の148
【勝率6割】
菅野の.875、東浜巨(ソフトバンク)の.818、森下暢仁(広島)の.769、涌井秀章(楽天)の.733、美馬学(ロッテ)の.714、西の.688、山本の.667、大野、千賀の.647、九里亜蓮(広島)の.615。最高勝率のタイトルの基準(今シーズンは特例で10勝以上)を満たす投手で6割以上は他にもいるが、ここでは規定投球回数に到達している投手のみを書き出した。
【防御率2.50】
大野の1.82、森下の1.91、菅野の2.04、千賀の2.16、山本の2.20、西の2.26、東浜の2.34