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永里優季インタビュー 男子サッカーの中で感じる「強み」、価値観が変貌した米国生活とは
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKyodo News
posted2020/11/05 11:00
はやぶさイレブンで笑顔を浮かべながら練習する永里。今の自分に充実感を得ているようだ
リオ五輪予選後、1年近く目標が……
――そんな風に視野が広がり始めたのは、いつ頃からですか?
「15年のW杯までは、得点王になる、W杯に出る、オリンピックに出る、海外に移籍する、優勝する、メダルを獲得する……って、目標が勝手に下りてきて、よし、次はこれを目指そう、と思っていたんですけど、15年のW杯が終わったあと、新たな目標をなかなか見いだせない自分がいたんですね。さらに翌年、リオ五輪の予選で敗れてからは本当に1年近く、目標のない生活を送っていたんです」
――そんな時期があったんですね。
「その頃は本当に辛かったです。ただその後、17年5月にたまたまアメリカ移籍の話を頂いて。そのとき、これを最後のチャンスにしようって。これで何も見つけられなかったら、サッカーを辞めようと思ってアメリカに行ったんです」
アメリカだと結果は一部に過ぎなくて
――それだけの覚悟を持って。
「そうしたら、アメリカのライフスタイルがヨーロッパとまったく違ったんです。ヨーロッパの場合は結果主義的なところが強くて、結果を出すためにとか、サッカーがすべてといった捉え方なんですね。でも、アメリカの場合は、見に来る人も、プレーする人も、結果は一部に過ぎなくて、それ以外にも楽しむ要素はいっぱいあるよね、っていう感じなんです。そうした価値観から受ける刺激がものすごく強くて。それで、目標は設定しなくてもいいのかな、って思い始めたんです」
――優勝だとか、結果にこだわりすぎるのではなく。
「目標が自分の内側に変わったんですね。自分の成長や自分が何に幸せを感じるか、そこにフォーカスしてやればいいかなって。そのほうが自然体になれることに気づいて、ガッと振り切りました。最初は葛藤があったんですけど、結果に対して一喜一憂しなくなったら、パフォーマンスが上がったんです。それまではサッカーがすべてだったのが、人生の一部に感じられるようになって、サッカー以外のことに興味、関心が湧くようになった。その相乗効果でパフォーマンスが上がっていった感覚がすごくあります」