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原晋監督「デコボコ駅伝」 3強で4位に沈んだ青学大「駅伝で“外す”選手と“外さない”選手の差とは?」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2020/11/04 17:01
8区で青学大・吉田圭太(右)に追いつき、逆転する東海大・名取燎太(左)と駒大・田澤廉
大学駅伝初登場となったのは、2区の近藤幸太郎(2年・豊川工)、3区の中村、5区の佐藤、6区の山内の4人である。それぞれの5000mの自己ベストを比較すると、こうなる。
近藤 13分44秒31
中村 13分51秒81
佐藤 13分55秒60
山内 13分52秒02
5000mで13分台を出していれば、他校ではエース区間を走る候補となる。青学大は13分台のランナーを10人以上抱え、とにかく駅伝の「レギュラー」を勝ち取るのは並大抵のことではない。
この4人、トラックでの持ちタイムでは同等の力を持っていることが分かる。
トラックでのタイムだけでは計り知れない駅伝力の差
そこで原監督は、実戦で駅伝力を試したわけだ。
「3区の中村は二重丸でしたし、5区の佐藤は高校時代から見せていた駅伝力を見せてくれました。駅伝力が一枚も、二枚も違うし、額面通りの力を出してくれたと思っています。一方で、近藤は岸本(大紀・2年 前年度の全日本、箱根とも重要な2区を走り、いずれも区間5位)と同等の力があると思っていたんですが、駅伝力が出せませんでした。6区については4日前まで誰を起用するか決められなかった、私の采配ミスです。山内を起用した理由は、中継所まで接戦になることを見越して、ラストでキレる(注・スパートのスピードがあること)山内を配置したのですが、そこまでの勝負に持ち込めませんでした。緊張もあったのかもしれません。やはり、トラックでのタイムだけでは計り知れない駅伝力の差が出たのかな、と思います」
駅伝力という言葉は、「原語録」のひとつだ。
本来は個人競技である陸上競技だが、タスキを介した駅伝となると、人間力ともいうべきプラスアルファの力を発揮する選手がいる。
特に、佐藤は昨年の全国高校駅伝の1区で区間賞を取り、本人の駅伝に対する思い入れも強く、不思議な力を持っているとしかいいようがない。
今回、デコボコ駅伝になってしまったのは、出雲駅伝が中止になったことで、全日本で駅伝力を試すしかなくなったことが大きい。コロナ禍は駅伝の場にも影響を与えているのだ。