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「若貴ブーム」時代の相撲ファンは再び相撲に戻ってくるか? ドハマりして2年で相撲映画を完成させたTVマン 

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西尾克洋

西尾克洋Katsuhiro Nishio

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posted2020/10/30 17:04

「若貴ブーム」時代の相撲ファンは再び相撲に戻ってくるか? ドハマりして2年で相撲映画を完成させたTVマン<Number Web> photograph by KYODO

香港島のビル群をバックに笑顔の貴ノ花(右)と若花田(大相撲香港場所で、1993年撮影)

 たまたま番組のゲストに来ていた相撲漫画家の琴剣さんと知り合い、相撲部屋で朝稽古を見学することになった。そしてその時、力士達の迫力に坂田さんは自らが相撲を全く知らなかったことを思い知らされる。強い男が好きだという気持ちが揺さぶられた。

 2018年夏場所を現地観戦し、番狂わせを目の当たりにする。会場が一体になる光景に目を奪われ、TVマンとして大相撲の素晴らしさを広めたいという想いを抱いた。

ハマって2年で相撲映画完成

 ここからの動きは驚くほど早かった。

 2018年の年末から大相撲のドキュメンタリー映画の撮影のため半年間境川部屋と髙田川部屋に密着取材し、完成したのが映画「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」である。

 そこには大相撲の持つ良い意味での緩い雰囲気も無ければ、力士の持つ楽しさという要素もほぼ無い。坂田さんはコーディネーターである琴剣さんに「古い相撲部屋の雰囲気がある部屋」という条件で取材対象を相談し、その時に候補として挙げられたのが境川部屋だった。ひたむきに相撲に精進する姿を描きたいという坂田さんの要望に大関昇進の口上として「大和魂」というワードを選んだ豪栄道が在籍している境川部屋はうってつけだったのだ。なお髙田川部屋については境川部屋とは異なるテイストの部屋を、ということで紹介を受けたそうである。しかし、どちらも稽古が厳しいことで有名な部屋というのはとても興味深い。

 例えば作中で妙義龍が笑いながら「毎日が交通事故ですよ」と語る。力士にとっての肉体的・精神的に当たり前のことを描けば描くほどに超人性が浮き彫りになる構図だ。このようなショートエピソードを繰り返し見せることによって、視聴者は否が応でも力士が超人であることを認識することになる。

 若貴を経ている方も、ワイドショーが報じる揉め事でしか大相撲を知らない方も、今の大相撲を観ると昔とは異なる感想を抱くことになるだろう。人生経験と価値観の変化によってこれまで気づかなかった相撲が見えることになる。坂田さんの事例は、そういう可能性を示すものではないかと思うのだ。

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