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「若貴ブーム」時代の相撲ファンは再び相撲に戻ってくるか? ドハマりして2年で相撲映画を完成させたTVマン
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKYODO
posted2020/10/30 17:04
香港島のビル群をバックに笑顔の貴ノ花(右)と若花田(大相撲香港場所で、1993年撮影)
ただ、成人してから一旦距離を置いた人が何気なく相撲を観ると、新鮮さや面白さにあらためて気づき相撲に戻ってくるという1つの王道パターンがある。面白さを幼少の頃は真っすぐに受け止められたが、多感な時代に様々な感情や思考、周囲の目線などが混ざり合うために「好き」だという気持ちを素直に認められなくなる。複雑な感情や自分の置かれた状況などを踏まえたうえで、それでも自分の「好き」を認められるようになるのが概ね成人してからだというのは大変興味深い。
相撲に戻ってきた「マツコの知らない世界」総合演出
この両方の事例に当てはまり、一度は大相撲から離れながらも大相撲の魅力に目覚めて発信している方もいる。TBSのテレビ番組「マツコの知らない世界」の総合演出を手掛けていた坂田栄治さんがその人である。
今年45歳の彼は子供の頃に「世の中が皆相撲を観ていた」と語るように、10代で若貴ブームを経験している。若乃花や貴乃花、曙の取組に手に汗を握り、毎日のように相撲を楽しんでいたと話す。
ただ、次第に興味の対象が別のものに移る。坂田さんの場合は、総合格闘技だった。
何か具体的なきっかけがあって大相撲を観なくなったのか?と聞いても、特に大相撲に対する感情の変化はなかったが、それ以上にのめりこむ対象を見つけてしまったという。『格闘技通信』を毎週のようにむさぼり読み、安生洋二がヒクソン・グレイシーに血まみれにさせられた時の衝撃を語る坂田さん。「要するに、強い男が好きなんですよ」。大相撲も完全に興味を失ったわけではなかった。タイミングが合えばNHKで相撲観戦するくらいの、どこにでも居るライトなファンだったという。
だが、坂田さんはひょんなことから相撲に戻ることになる。きっかけは彼が担当していた「マツコの知らない世界」で相撲メシを特集した時のことだ。