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クリロナがコロナ陽性、“ナポリ試合放棄事件”が大モメ どうなる感染急増セリエA
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/10/15 17:35
新型コロナ陽性反応が出たクリスティアーノ・ロナウド。無症状だとの報道には世界中が安どしている
「トリノへ遠征せよ、さもなくば試合放棄と見なす」
サッカー界と内閣の約束事である「プロトコル」が定めた条件には合致しないが、行政機関である保健所からのお達しとあれば、試合に行くわけにはいかない。
そう考えたアウレリオ・デラウレンティス会長は3日の内に、FIGCとリーグ機構、対戦相手のユベントスへASLからの文書を添えて延期要請を行ったのだが、3者からの返事はいずれも「ルール(=プロトコル)に従って試合は予定通り開催される。トリノへ遠征せよ、さもなくば試合放棄と見なす」と、にべもないものだった。
リーグ機構とFIGCは、昨季中のリーグ再開に懐疑的だった政府にプロトコルを承認させるため、随分と骨を折った。FIGCグラビーナ会長は「ルールに従わなかった者(=ナポリ)は贖罪すべき」と糾弾し、リーグ機構のパオロ・ダル・ピーノ会長はクラブ同士の共同歩調を乱す、いわば“プロトコル破り”を行ったナポリに対し、「0-3黒星」に加えて勝点剥奪も辞さないという強硬姿勢で臨んでいる。
政界や専門家をも巻き込む大論争に
試合の開催側だったユベントスにしてみれば、他に選択肢はなかった。仮に同調してゲームの開催準備を怠り、選手11人を試合開始時刻にグラウンドへ立たせなければ、試合放棄扱いされるのは自分たちの方だ。
当夜、ボールを蹴る音がついぞ聞かれなかったアリアンツ・スタジアムで、ユーベのアンドレア・アニェッリ会長は「我々はルールに従ったまで」と憮然とした表情で語ったが、この“ナポリ試合放棄事件”は、政界や専門家を巻き込む大論争に発展した。
「(遠征禁止については)国と州の防疫衛生法規に基づいて下した必要な処置だった」とナポリ地方保健所は正当性を主張し、ナポリを州都とするカンパーニャ州のビンチェンツォ・デ・ルカ知事も「もしナポリが保健所を無視して遠征した結果、1週間後にクリスティアーノ・ロナウドに陽性反応が出たらユベントスは何と言うのだろう」と、地元クラブに敵対する王者を非難した。