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クリロナがコロナ陽性、“ナポリ試合放棄事件”が大モメ どうなる感染急増セリエA
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/10/15 17:35
新型コロナ陽性反応が出たクリスティアーノ・ロナウド。無症状だとの報道には世界中が安どしている
健康を守りながらリーグの進行を促すはずが…
昨季、第二次世界大戦以来の中断という苦い経験を経たリーグ機構とFIGCが、放映権料を生み出す財源であるセリエAの日程消化を最優先に考えるのは当然だが、ここにきて、リーグ戦の進行を促しつつ選手の健康を守るはずの「プロトコル」が、諸刃の剣にもなることがわかってきた。
9月26日の第2節を前に1選手の陽性が発覚(氏名非公表。後に3名に増加)したトリノは、プロトコルの規定により全体練習を禁じられ、3日間個人メニューをこなしただけで強敵アタランタに挑む羽目になり、ホームで4失点大敗を喫した。
前日25日にエースFWズラタン・イブラヒモビッチの陽性が発覚したミランも、クロトーネとの第2節アウェーゲームに大黒柱抜きで臨まざるを得なかった。
ユーべ相手の“ナポリ試合放棄事件”
極めつけは、プロトコルの抱える歪みや矛盾を暴き出した第3節の“ナポリ試合放棄事件”だ。
10月4日夜、ユベントス対ナポリの大一番に、ナポリの選手たちは姿を現さなかった。
日本での中継では「対戦チームの到着待ち」というテロップが流れていたようだが、事実は少し異なっていて、アンドレア・ピルロ監督始めユベントスの面々は、雨が降り続いたその夜、ナポリが絶対に来ないことを知っていた。
ダニエレ・ドベーリ主審は規定通り45分間待った後、その場にいないナポリの“試合放棄”を告げる笛を吹いた。ルール上、ナポリには「0-3での黒星」処分が下される可能性がある。
第2のクラスター発生を恐れ行政の判断を
なぜ、こんな事態が起きたのか。
試合前々日の2日、MFピオトル・ジーリンスキに陽性反応が出たナポリは、トリノへ出発する3日の朝にMFエリフ・エルマスの陽性も確認し、動揺した。
彼らは9月27日の前節で、ちょうどチーム内で爆発的感染が発生した時期のジェノアと対戦していた。第2のクラスター発生を恐れたナポリは、COVID-19に対する最前線機関であるASL(地方保健所)に判断を仰いだ。
行政機関であるASLの回答は、該当選手(ジーリンスキ、エルマス)の隔離と関係者全員の当地在留を強く促すもので、つまり事実上トリノへの遠征移動を禁じるものだった。