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藤井聡太二冠は進学校だけど…「将棋は偏差値が高い子どもが有利?」「理系と文系で差は?」“教授”に聞く
text by
小島渉Wataru Kojima
photograph byKYODO
posted2020/10/11 17:01
最年少二冠、最年少八段昇段を果たした藤井聡太。愛知県の進学校に通う
勝又 僕は小学校3年生で将棋を覚えて、しばらくは詰将棋をやりながら近所のおじさんと指すぐらいだったんですよ。道場にいっていろんな人と指すようになったのは小学校5年生で、奨励会に入ったのは中学3年生なんです。ずっとプロに教わらずに強くなったので、本筋よりイモ筋が身についてしまった。自分の筋の悪さを直したのは24歳、奨励会三段で年齢制限が迫ってからなんです。あのときは必死になって直したんですけど、いまでもつい早指しのときにイモ筋が浮かんでしまう悪い癖が出てしまうんですよね。
「年齢」よりも「将棋年齢」
――子どもはどうやって、本筋を覚えるんでしょう?
勝又 経験でしょうね。大局観は経験がもたらすもので、将棋を始めてから早いうちに本筋に触れたほうがいいと思っています。僕が重要だと思っているのは、将棋を覚えた年齢じゃなくて、将棋を覚えて何年たったかの「将棋年齢」です。つまり、“何歳で”アマ初段になったかじゃなくて、“何年で”アマ初段になったかなんですよ。森けい二九段は高校生で将棋を覚えて、すぐに強くなって将棋を覚えてからわずか5年足らずの21歳で棋士になりました。タイトル2期獲得、棋戦優勝2回、名人位にも挑戦と活躍されました。それを見ても、将棋を覚えたのが何歳かは関係ないと分かりますね。
――将棋年齢は若いほうがいいんでしょうか。
勝又 そう思いますね。将棋年齢が若ければ若いほどよくて、そのときに本筋に触れれば身に付きます。たとえイモ筋で強くなっても、将棋年齢が若いうちに奨励会に入ってしまえば、強い相手に絶対に痛い目に遭うから、本筋を覚えようとするんですよね。強い人と指す、痛い目に遭う、それを自分のものにする。そういうサイクルを回していくと、本筋で強くなれます。
いまがいい時代だなと思うのは、インターネット将棋でいくらでも強い人がいるじゃないですか。日本全国どこでも相手がいるので、そういうサイクルに乗りやすいんですよね。
お土産は「スポーツ新聞の詰将棋」
――インターネット対局サイト「将棋倶楽部24」ができたのが1998年です。24時間、日本全国の相手と指せるようになりました。近年では将棋ソフトやネット中継が加わり、将棋の勉強法は情報技術の進化と結びついています。