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グランアレグリアはますます強くなる あの名牝を大スランプから完全復活させた藤沢師の技
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/10/09 19:00
06年、米GIIIキャッシュコールマイルを制した直後のダンスインザムード。鞍上はのちに米殿堂入りの名手のV・エスピノーザだった
復活の陰に、名調教師の技
ちなみにアメリカでは馬体重の発表がないが、遠征前のレースでは470キロ台で走っていた。デビュー時から20キロは成長していたわけだが、当時、伯楽は次のように語っていた。
「2年前にハリウッドパークに来た時には馬場入りの際、止まったり、バックしたりしたものだけど、今回はスムーズでしたね。精神的にも馬が成長したという事でしょう」
成長を促すために何か手を打ったのか? と尋ねた時も、名調教師はかぶりを振った。
「いえいえ、とくに何かをしたという事はありません。馬が経験を積んで、自然と成長してくれました」
もちろんこの言葉を鵜呑みにする事は出来ない。例えばキャッシュコールマイルの際のスクーリング(下見)は厩舎から装鞍所、パドック、そしてコース入りまでの経路をレース当日と同じ順に歩かせていた。これはアメリカンオークスの際、競馬場側の指示に従ったところ、真逆に戻る感じで歩かされた事を受けて、修正したのだった。こんな事はほんの一例。復活の陰には、単なる時間の経過による成長ではない、馬と寄り添う名調教師だからこその技がそこかしこにちりばめられていた事だろう。
今回のグランアレグリアの成長に関しても、藤沢師は「勝手に成長してくれました」と笑って語る。しかし、例えば3歳時に無理をさせずに3回しか使わなかった事など、成長を促すためにとった手段は様々あったはず。1500の勝利を積み重ねた手腕の下、彼女はますます強くなりそうだ。