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ジョコビッチ“線審不要論”に審判側の意見は? 主審への大事な修行機会だが…
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/10/07 11:01
全米オープンでの失態は論外だが、ジョコビッチの線審についての提言は考えさせられるものだ
「僕がNYでやってしまったことも……」
「ラインパーソンがいなければ、僕がニューヨークでやってしまったことも、起こらずにすんだかもしれないし」
不敵な笑みを浮かべて自ら言及したニューヨークでの出来事というのは、全米オープン4回戦で、ジョコビッチが不用意・無遠慮にコート後方に打ったボールが女性線審の喉元を直撃し、失格処分を受けた事件のことだ。
あの直後にこの発言をしていたら大変な非難を浴びたに違いないが、実のところ、コロナ感染防止のため現地で大会に携わる人の数を極力減らしている状況もあって、「線審は要らないのでは?」という声は囁かれていたのである。
何しろ線審の数はグランドスラムの場合、1つのコートに9人。1時間ごとに別の9人のチームと交替するシステムで、とにかく人員を要する。ジョコビッチの行為を擁護するために「そもそもなぜ、このコロナ禍で線審をつけたのか」という議論を持ち出すのは論点のすり替えだが、「線審がいなくても試合はできる」という点は間違っていない。
全米では2つのコート以外、線審なし
実際、全米オープンではセンターコートのアーサー・アッシュ・スタジアムと準センターコートのルイ・アームストロング・スタジアム以外の全てのコートで線審はいなかった。
同じ会場で行なわれた前哨戦の『ウエスタン・アンド・サザン・オープン』は決勝戦も含めて全ての試合が線審なしで行なわれた。本来、線審や主審のジャッジに対して選手が不服の場合に判定を確かめるという補助的役割の『ホークアイ』だが、線審に代わって「アウト!」や「フォールト!」のコール自体を行なう『ホークアイ・ライブ』の技術を活用することで実現した。
これは今回が初めての試みではない。