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錦織圭「一番良かった」は強がりではない 全仏2回戦敗退も美しいダウン・ザ・ライン発動
posted2020/10/02 11:01
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
所要時間は1回戦の3時間49分を上回る、3時間53分。2試合続けて5セットを戦い、錦織圭がとうとう力尽きた。
「3セットか4セットで勝てたチャンスがあった」と全仏2回戦を振り返ったのは、まさにその通りだ。
第1セットはブレークポイントが7回あったが、ブレークに成功したのは一度だけ。気づけば4-6で落としていた。ラケットを強く振り切ろうという意思が見てとれたが、少しの力み、少しの感覚のズレがエラーにつながり、要所を押さえることができなかった。
とはいえ、このセットのアンフォーストエラーは10本に過ぎず、相手のステファノ・トラバリアより1本少なかった。5セット通算でもアンフォーストエラーは51本と、相手より1本多いだけだった。リターンのタイミングがよく、特に相手のセカンドサーブをしっかり叩く場面が目立った。
ファーストサーブのポイント獲得率も、第1セットこそ40%と低調だったが、第3セットは78%、第4セットは68%と盛り返した。総獲得ポイントは、敗れた錦織が158、相手の156より2ポイント多かった。
「まだ安定してプレーできていない」
錦織の試合をたくさん見てきたが、この試合では、なぜこの内容でセットを落とすのかと不思議に思う瞬間が何度かあった。ただ、あとで振り返れば理由が理解できた。
初戦のあとで錦織は「すごくアップダウンがある試合だった」と話したが、2回戦も同じような展開だった。この日は「まだ安定してプレーできていない」という言葉で振り返った。
セットごとの出来不出来、また、セットの中でもいい時間帯と悪い時間帯があり、セットの立ち上がりやタイブレークなど大事なところで調子が上がらなかった。落とした3セットは、いずれも相手に先にブレークを許し、追いかける展開を強いられた。