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久保建英の奮闘に隠れているが…バルサとメッシの新境地 “悪役”クーマンは何を変えた?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2020/09/28 20:00
バルサの天才リオネル・メッシとビジャレアル久保建英の対決が注目されたが、バルサ全体の変化にも興味深いものがあった
メッシは1人でゴールチャンスを作り出した
一方でクーマンがどう組み込むかも注目されたメッシも、その天才性と適応力を垣間見せている。
天才性は前半終了間際の場面だ。自陣近くで奪ったボールを拾うと、狭いスペースに相手2人がいるというのに、超速ダブルタッチでかわして前を向く。一度デヨングに預けてボールを受けるとクロスを送り、これが相手のオウンゴールを誘発したのだ(ちなみにメッシのクロスに飛び込んだのがブスケッツなのも意外だが)。
その10分前にPKを決めて今季初得点を決めているが、数字に残らないこのシーンにこそ、相変わらず1人でゴールチャンスを作り出してしまう凄味を感じた。
それと同時にメッシはクーマン体制での守備にも適応していた。とかく言われがちな“走らない”との評だが、明らかに攻守転換が早くなったチームの中で、メッシも鋭いプレスバックを何度も見せていた。
守備面でも興味深いシーンが
そんな分かりやすい動き以上に、攻守のポジショニングでも興味深いシーンがあった。
31分から32分にかけてのこと。セルジ・ロベルトが中央に入って組み立てに参加すると、メッシはそこを埋めるかのように“右サイドバック”的な位置に入る。そこからの浮き球パスは相手に渡ったものの、そこからパスを送ろうとした相手に対して、メッシはドリブルとパスコースをすぐ制限。相手DFエストゥピニャンのコントロールミスでタッチラインを割ったが、もしプレーが続いたとしてもカウンターを遅らせることに成功していたのではないか。