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久保建英の奮闘に隠れているが…バルサとメッシの新境地 “悪役”クーマンは何を変えた?
posted2020/09/28 20:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Getty Images
「私は“映画の悪役”じゃない」
バルサにとって2020-21シーズン初の公式戦となるビジャレアル戦前日、こんな見出しが地元紙「ラ・バングアルディア」電子版に載っていた。
声の主は、ロナルド・クーマン新監督だ。かつてヨハン・クライフ監督の下でドリームチームの一員として黄金時代を築いたオランダ人DFは、四半世紀ぶりにバルサに戻ってきた。
だが就任早々待っていたのは、予想もしなかった逆風だった。スアレスやラキティッチらを構想外とし、メッシに対して特別扱いはないと伝えたとの報道が世界中で拡散。結局メッシは残ったものの、いきなり冷酷な指導者という扱いを受けた。
それを受けて前日会見でクーマン監督は「彼らについてはクラブの決定で、契約する前からチームの変革を考えていた」とクラブ主導(そもそもバルトメウ会長らの不手際が多すぎるのだが)だったこと、そしてスアレスらの“円満退団”を強調。また「レオ・メッシはトレーニングで全員の模範になっている」とメッシへの絶大な信頼を明言した。それくらい言わないと、世間が“色眼鏡”を外してくれないと思ったのだろう。
バルサのゴールに誰よりも迫った久保建英
だからこそ、初戦のビジャレアル戦は昨季無冠のチームを立て直すための所信表明、として大事な90分だった。
果たしてクーマンは、最初の大一番に勝った――それも前半だけで4得点を奪っての大勝である。
ビジャレアル率いるウナイ・エメリ監督が、またカンプノウで“やらかした”面もある。
例えば、投入時点で4点差だったことを加味しても、バルサのゴールに誰よりも迫ったのは久保建英だった。
81分のドリブル突破からのラストパス、89分にはジョルディ・アルバを幻惑してのコントロールシュート。見せ場を作った久保は、「マルカ」紙でビジャレアルのフィールドプレーヤー唯一の3点満点中2点の評価を受けている。奮闘した久保が20分ほどしかプレー時間がなかったのは……と思うのは贔屓目なのだろうか。