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久保建英の奮闘に隠れているが…バルサとメッシの新境地 “悪役”クーマンは何を変えた?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2020/09/28 20:00
バルサの天才リオネル・メッシとビジャレアル久保建英の対決が注目されたが、バルサ全体の変化にも興味深いものがあった
バルサは昨季までとは違っていた?
そんな相手の出来に助けられたとはいえ、バルサからは昨季までとは違うエッセンス、変化が見えた。
まずはフォーメーション、立ち位置から違った。
[4-2-3-1]
……………グリーズマン……………
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ファティ…コウチーニョ……メッシ
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……デヨング……ブスケッツ………
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アルバ…………………S・ロベルト
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………ラングレ……ピケ……………
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…………………ネト…………………
ここ近年は伝統の4-3-3以外のフォーメーションで臨む試合もあったが、デヨングとブスケッツが組んだダブルボランチでキックオフを迎えたのは長らくバルサを見てきたファンにとっても新鮮だろう。
スタートポジションだけではない。1トップと2列目3人が、とてもフレキシブル。開始90秒時点でのパス回しでは4人+αの関係性がすでに流動的だった。
メッシが1トップの位置に入ってグリーズマンが右サイドに。ファティが左サイドに張ってメッシとファティの間くらいにコウチーニョ、その近くに攻撃参加したジョルディ・アルバ……。どうも文字化すると分かりづらいが、それぐらいグネグネと動いていた(地元メディアもメッシとグリーズマンの2人が“偽9番”の役割を果たした、と評しているほどだ)。
15分に見せた、“いつものバルサ”
すると15分に“いつものバルサ”っぽく均衡を破る。ボールを握ってビジャレアルに狙い所を絞らせずにいると、ラングレの長めのパスにアルバが左サイドの裏を抜ける。そのままゴールライン付近をえぐってマイナスのパスを送って、アンス・ファティが仕留めた。
長短織り交ぜたコンビネーションで先手を取ると、4分後には“3手”で追加点を奪う。自陣ペナルティーエリア内でラングレが長い距離の縦パスを送ってビジャレアルの選手6人を無力化。これをコウチーニョが悠々とドリブルして、相手を引き付けたら左にパス。これをファティが難なく決めて追加点を奪った。
ラングレのパスからファティのゴールまで約14秒。攻撃に手数をかけず素早く攻める一撃は、クーマンもしてやったりだろう。