F1ピットストップBACK NUMBER
ハミルトンが超えて行くシューマッハの偉業 トスカーナGPで感じた時代の「継承」
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2020/09/25 11:30
決勝前のデモ走行で最強V10サウンドを轟かせたミハエルの息子ミック。'19年からF2参戦中だが来季以降のF1参戦も取り沙汰されている
時代が変わることは過去が消えることではない
今年のトスカーナGPで90勝目を挙げたハミルトンが、いずれシューマッハの記録を数字の上で抜くことは時間の問題だろう。ただし、現在までのF1の戦い方というものがシューマッハの全盛時代に確立され、ひきつづき様々な影響を与えていることも忘れてはならない。グランプリの週末、その日の仕事を終えてほとんどのドライバーがホテルへ帰る頃、サーキットに自前のトレーニングマシンを持ち込んで毎日トレーニングを欠かさなかったシューマッハ。今ではF1ドライバーがサーキットでランニングしたり、自転車に乗ってトレーニングするのは珍しくなくなった。またフィジカルトレーナーをつけて、食事の管理を本格的に行うようになったのも、F1ではシューマッハが先駆けだった。
トスカーナGPのレース前、一台のフェラーリ・マシンが5.245kmのムジェロ・サーキットを疾走した。それはシューマッハが04年に最後にチャンピオンを獲得したときの伝説のマシンF2004だった。このマシンのステアリングを託されたのがシューマッハの長男ミック・シューマッハ。そのマシンを多くのF1関係者が羨望の眼差しで見つめていた。
時代は変わる。しかしそれは過去が消えてなくなってしまうことではない。セナによってシューマッハが強くなっていったように、シューマッハがいたからこそ今のハミルトンがいる。時代は常に引き継がれていくものなのだ。
ハミルトンを見て育ったドライバーたちによって、次はどんな時代が訪れるのだろうか。