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ハミルトンが超えて行くシューマッハの偉業 トスカーナGPで感じた時代の「継承」
posted2020/09/25 11:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
F1第9戦トスカーナGPは新型コロナ禍のなか、イタリアGPに続いてイタリアのトスカーナ州ムジェロで開催することになった初めてのグランプリだった。
レースを制したのは現役最強のルイス・ハミルトン(メルセデス)。今季6勝目となったこの勝利によって、ハミルトン個人の通算勝利数は90勝となり、あの偉大な大記録にあと1つに迫った。「偉大な記録」とはもちろん、皇帝ミハエル・シューマッハが持つ、F1史上最多となる優勝回数「91勝」だ。
1992年のベルギーGPで初優勝を飾って以来、1回目の引退となった2006年まで毎年優勝を重ねたシューマッハの91勝のなかには、いまも語り継がれる伝説の勝利がある。
シューマッハの卓越している3点
そのひとつが、98年ハンガリーGPでの3ストップ作戦だ。予選でフロントロウをマクラーレンに独占されたシューマッハとフェラーリは、このオーダーを逆転するためピットストップを1回多くして、1回あたりの給油時間を短くすることでマクラーレンの前に出て、その後は軽い燃料で飛ばすことでピットストップ1回分の時間を稼ぐ作戦に出た。
フェラーリ技術陣のトップだったロス・ブラウンからシューマッハに出された指令は、「マクラーレンに対して、19周で25秒の差を築け」だった。このマージンが築ければ、ピットインしてもトップのままコースに復帰できるからだ。しかし、周回遅れのマシンならいざ知らず、2番手のマシンに1周1秒以上の差をつけるのは並大抵なことではない。それでもシューマッハは毎周予選並みのラップを刻み、逆転優勝に成功した。
のちにブラウンはシューマッハの卓越している3点を挙げて次のように語っている。