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「大坂なおみは100%受け入れられるよ」全仏欠場もレキップ紙記者が称えた勇気と尊厳
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/09/18 18:00
優勝から一夜明け、鮮やかなドレスに身を包んだ大坂なおみ。その姿勢を貫き、新たな女王像を築いてほしい
ビリー・ジーン・キングと男女同権運動
また、会場であるナショナル・テニスセンターそのものに名前が冠されているのはビリー・ジーン・キング。12のグランドスラム・タイトルを持つ現在76歳のアメリカの元スター選手だが、その実績と並んで、あるいはそれ以上に、テニスにおける男女差別と戦ってきた功績が大きい。
全米オープンは1973年にもう男女の同額賞金を実現させたが、これはキングがボイコットを宣言してまで強く求めてきたことだった。ちなみに、グランドスラム大会すべてで賞金が同額となったのは30年以上も先、2007年のことである。キングはまた、80年代初めに同性愛者であることをカミングアウトし、LGBTの権利向上の活動にも積極的に取り組んできた。
こうした背景を知り、その思想と姿勢でファンに受け入れられながら歩んできた大会であることを理解すれば、ブラック・ライヴズ・マター運動が再燃する中、大々的に『Be Open Campaign』を展開したことは決して不自然ではない。
大坂の要望を全て許したわけではなかった
一方で、たとえ大坂の要望でも全てを許したわけではなかった。決勝後のリモート会見で「表彰式でマスクを付けるという考えはなかったのか」と聞かれた大坂は、こう答えた。
「それは考えていました。でも大会からは表彰式でマスクをつけないようにということだった。なので、言われた通りにしました」
表彰式はコートの中で行なわれるものであり、準優勝者も並ぶ。主審もこの場であらためて紹介されて功労の品を受け取り、線審もボールパーソンも労われる。チャンピオンだけのためのものではない。入場の際の着用とは意味合いが大きく異なるだろう。そして大坂は、ルールを守りながら信念と決意を貫いた。
ただ、実はずっと懸念を抱いていたことがある。大坂がニューヨークで示してきた姿勢は、世界のどこへ行っても受け入れられるだろうかということだ。