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全米男子決勝は“心を捉える消耗戦” 新王者ティーム誕生、BIG3vs.次世代は新展開へ

posted2020/09/15 18:00

 
全米男子決勝は“心を捉える消耗戦” 新王者ティーム誕生、BIG3vs.次世代は新展開へ<Number Web> photograph by Getty Images

厳しい意見も並んだティームとズべレフの決勝だったが、フルセットマッチの激闘だったことは間違いない。

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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 最高のパフォーマンスではなかったとしても、心を捉える試合がある。ドミニク・ティームがアレクサンダー・ズベレフに2セットダウンから逆転勝ちした全米オープン男子シングルス決勝は、そういう一戦だった。

 彼らの基準値から見れば、この5セットの出来は満点とは言えない。その意味では、大舞台で必ず100%の実力を発揮するノバク・ジョコビッチやラファエル・ナダルとは比べようもない。だが、この決勝はまれに見る熱戦だった。四大大会初タイトルを目前にして、だからこそ本来の力を出せず、もがく両者の姿がよかった。

ティームは“ノックダウン寸前”だった

 今年の全豪を含め四大大会の決勝で3度涙をのんだティームにとっては、悲願達成となった。

「人生の目標、自分の夢が達成できた。テニスを始めた頃からの夢だった。遠い道のりだったが、四大大会に優勝するために人生を捧げてきた。今、それを成し遂げた」

 周囲への感謝とともに、ティームは感激を口にした。

 両者の苦闘は、男子テニスの歴史を書き換える記録を生んだ。全米の男子シングルス決勝が最終セットのタイブレークで決着するのは、史上初。また、ティームが2セットダウンから逆転勝ちで優勝を決めたのは、1949年のパンチョ・ゴンザレス以来71年ぶり、オープン化(1968年のプロ解禁)以降では初の快挙だった。

 最終セットのタイブレークで、ティームはノックダウン寸前のボクサーのようだった。少し前から脚が動かなくなっており、セット終盤にはチェンジエンドの時間を使ってトレーナーの処置を受けた。レフェリーが3分間のメディカルタイムアウトを認めなかったのは、故障や疾病ではなく、けいれんと判断されたからだ。両者はすでに4時間近く走っていた。

 ティームは不調の立ち上がりに2セットを失ったが、無理やりギアを上げ、2セット取り返した。しかし、最終セットには動きが鈍り、バックハンドの強打が打てなくなった。ティームはコンディションについて明かした。

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ドミニク・ティーム
アレキサンダー・ズベレフ

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