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「大坂なおみは100%受け入れられるよ」全仏欠場もレキップ紙記者が称えた勇気と尊厳
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/09/18 18:00
優勝から一夜明け、鮮やかなドレスに身を包んだ大坂なおみ。その姿勢を貫き、新たな女王像を築いてほしい
開幕直前『Be Open Campaign』の展開
そして何より、全米オープンを主催するUSTA(全米テニス協会)が今回打ち出した『Be Open Campaign』は、大坂の抗議行動を許すためのキャンペーンといってもよかった。
本来、全米オープンを含めたグランドスラム大会では本来、政治的・社会的メッセージを表現するものを選手が身に付けて試合に臨むことを認めていない。しかし、開幕の4日前に発表されたこのキャンペーンの一環で、今回は選手が人種差別、性差別、同性愛者への差別といった問題についてメッセージを発信することを許していたのだ。
USTAが出した声明を要約する。
「USTAは人種の平等を実現することに努めている。多様性を認め、ともに生きるという我々の方針は、テニスのさらなる繁栄にもつながると信じる。テニスは、人種、性別、性的指向、その他いっさいの特性に関わらず、どこの誰であろうと、参加し、プレーし、競えるスポーツでなくてはならない」
「信条をコート上でも表現できる権利を」
そのような基本理念を示した上で、こう述べられる。
「先例のないこの時代、アスリートも自身の信条をコート上でも表現できる権利を与えられるべきだと考える。『BLM』がこの前提に立つきっかけではあったが、ある特定の社会問題のみに言論の自由を認めることは、本当の自由といえない。2020年の全米オープンにおいて、選手は皆等しく、自身の意見や社会正義について表現することが認められる」
さまざまな差別を撤廃しようとするUSTAの理念は、全米オープンの歴史や、会場の中にも随所に見ることができる。
センターコートの名称は『アーサー・アッシュ・スタジアム』。アッシュは、1968年の全米オープンをはじめ3度グランドスラムを制した黒人プロテニスプレーヤーの先駆者だ。また、オープン化前の1957年に黒人女子選手として初のシングルス優勝者となったアリシア・ギブソンの像も、近年建立された。