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セルビアで得点ランク首位、浅野拓磨の選択が“賢い”理由 サッカー選手に一番大切なものって何?
posted2020/09/22 11:50
text by
中野遼太郎Ryotaro Nakano
photograph by
Getty Images
「ASANOって良い選手だな」
先日のスタッフミーティングである同僚からそう言われました。
ヨーロッパリーグ(EL)予選で、浅野拓磨選手の所属するパルチザン・ベオグラードは、RFS(ラトビアのクラブ)と対戦しました(結果は1-0でパルチザンの勝利)。この試合でも縦への脅威を見せ続けた浅野選手は、RFSを自陣に押し込め、幾度も決定機を作り出し、同じ日本人という贔屓目を抜いても「目立つ」選手に映りました。
ちなみにラトビア人スタッフは「審判が買収されていた」と嘆いていましたが、だいたい2試合に1回は「審判が買収されていた」と嘆いているので、これは「手も足も出なかった」の意訳です。仲間内でテニスをしても、ビーチバレーをしても、だいたい「審判が買収されている」ことに落ち着きます。
浅野の移籍は「賢い」選択
さて。浅野選手の経歴を整理すると、2016年夏にアーセナルと契約したあとは、3年間をブンデスリーガで過ごしています(いずれもレンタル移籍)。昨年夏、なかなか飛び抜けた活躍がなかったところで、パルチザンが3年契約で買い取りました。
この経緯を見る限り、おそらく日本では「馴染みのないクラブに移籍した」というのが大半の印象だったのではないでしょうか。「都落ち」のようなニュアンスで受け取った人さえいるかもしれません。しかし、僕は密かに「賢い」と思っていました。
パルチザンといえば、東欧では知らない人がいない強豪クラブです。そして「東欧」という地域は、旧ユーゴスラビア圏を中心に、素晴らしい選手の供給源として評価と実績が定着しています。
浅野選手はそこでエースとしての地位を確立し、セルビアリーグで得点ランキング首位に立っています(9月21日現在)。
「EL予選の相手はラトビアのクラブだから」「セルビアリーグのレベルが高くないから」という声もあるのかもしれません。しかし、それこそが肝要な部分なのではないでしょうか。