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藤井聡太を「ワクワクしながら見ています」 55歳上の中原誠が語った年齢と棋力の相関関係
posted2020/09/09 11:50
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Miki Fukano
「羽生善治」の名が一躍日本中に知れ渡ったのは、名人経験者を4連破して初優勝を飾った'88年のNHK杯だった。その決勝で相まみえたのが中原誠十六世名人である。当時、羽生は現在の藤井聡太二冠と同じ18歳だった。
「あの決勝戦は本当にまずい将棋でした。途中でダメにしてしまって、勝負所がありませんでした。収録から放映まで少し時間があったので、その間になにか大事件でも起きて放送中止になればいいのにと本気で思ったほどです(笑)」
発売中のNumber1010号「藤井聡太と将棋の天才」収録の「中原誠が語る18歳の羽生と藤井」で、中原は18歳に敗れた将棋をこう振り返っている。
「年上が耐えられないのも仕方がないのかなと」
藤井に更新されるまで最年少記録だった屋敷伸之九段の最年少タイトル挑戦(17歳10カ月24日)と最年少タイトル獲得(18歳6カ月)の相手でもある中原は、自身の経験から、「年齢差は大きい」と言う。
「5歳違いまでは同世代。6歳から15歳差までを先輩、後輩」と区分けして、「将棋界では、その考え方がピタッとはまる」と断言する。
さらに具体例をあげて、「米長さん(邦雄永世棋聖)は4歳上でしたから同世代。谷川さん(浩司九段)は15歳だからギリギリ先輩後輩の関係。そこまでの差は、こちらも頑張らなければいけないと考えて必死でやりました。羽生さん(善治九段)ともなると、23歳差の大後輩。そこまで差がつくと、耐えられないのも仕方がないのかなと」と苦笑されていた。
このコメントを見て、中原以上に苦笑するしかないのは谷川浩司九段の方だろう。その対戦成績は中原42勝、谷川56勝。タイトル戦では6度激突して、両者3つずつ分け合った。中原が「よく頑張った」と振り返ることができるだけの数字がそこには残されていた。