サムライブルーの原材料BACK NUMBER
横浜F・マリノスに10年ぶりに帰還。
水沼宏太の優しいクロスに見惚れる。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/08/28 20:00
横浜F・マリノスのジュニアユース、ユース出身の水沼。今年、10年ぶりのクラブ復帰でもすぐに馴染んでいる。
お互いに「ここに来る」「そこへ出す」が通じ合う。
水沼に聞いた。
「蹴りたい位置に阿道がポジションを取ってくれていました。そこはお互いに信頼関係がありますから。練習でもやってきているし、あとはヘディングしやすいボールを送るだけ。
ただ、あそこで(待っているのが)阿道じゃなかったら、違う種類のボールを選択していたかも。人の特長によってキックの種類を変えていきたいというのはいつもあるので」
ヘディングの得意なオナイウだからこそ、日ごろのトレーニングで合わしてきたからこそ、お互いに「ここに来る」「そこへ出す」が通じ合う。
「相手の状況と味方の走り込み」により球質を変える。
そしてもう1つのエンジェルクロスが7月22日、ホームでの横浜FC戦である。
2-0でリードしていた後半12分にピッチに入り、その8分後。右サイドでボールを受けるとマイナス方向にカットインして、ファーサイドでフリーになって待ち受ける遠藤渓太の頭にスライス気味のボールを送った。利き足とは逆の左でこれもフワリと浮かせ、これまたピンポイントで。遠藤は合わせるだけでよかった。
「渓太はそれまで散々、自分のクロスを外してきていたので、これは決めてくれるだろうって(笑)。
あの試合に限ってはファーが空いていましたから、そこにうまくボールを出せれば絶対ゴールにつながるってことは分かっていました。左足で上げて結果としてゴールになったのは、これから相手に“左足(のクロス)もある”と思わせることにもつながる」
2つのアシストはいずれもフワリ系だ。ただそれは水沼が持つ球種の1つにすぎない。
ウイングがボールを持てばすぐにスピード系のクロスを送ってニアで合わせるのがF・マリノスの必殺パターンの1つ。しかし今季はかなり対戦相手に警戒されており、水沼は「相手の状況と味方の走り込み」によって球質やタイミングにアレンジを加えている。