マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
横浜高の打撃を甲子園で見たかった。
絶妙だった「引っ張り」の意思統一。
posted2020/08/23 09:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kanagawa Shimbun/Kyodo News Images
夏の高校野球「神奈川大会」は、例年テレビ神奈川さんと湘南ケーブルネットワークさんが、試合のテレビ中継を行う。
テレビ神奈川さんは、県の高野連の先生方が解説をされるが、湘南ケーブルさんのほうは、主に神奈川の高校や大学出身の元選手、指導者の方たちが解説にあたる。
その湘南ケーブルさんの解説陣の末席に入れていただいて、今年で7年目になる。
「神奈川」の高校野球は、みんな上手い。
残念ながら初戦で敗退するようなチームでも、きちんとした野球ができる。日々、腕を磨いてきた選手たちの努力と、指導されてきた方々の骨折りに頭が下がる。
2年生左腕を襲う横浜の強打。
2回戦、横浜高vs.戸塚高の試合が、解説の当番になった。公立校の中では「今年は相模原高と戸塚高が手ごわい……」そんな前評判が耳に届いていた。その通り、ほとんどの送球をストライクスローでつないでみせたシートノックから、戸塚高の意識の高さはネット裏にも伝わってきていた。
戸塚高の先発は、2年生左腕・川崎大輔。
小柄でも全身を使って、渾身の腕の振りから、速球、スライダー、カーブを駆使して、全国レベルの横浜高強打線に真っ向勝負だ。
初回、2人のランナーを許したが、4番・大手晴中堅手を詰まった二塁ゴロ併殺に打ち取って立ち上がりのピンチをしのいだ。さあ、ここから本来のリズムを取り戻すか……と思ったら、2回の攻撃で横浜高の強打線が川崎投手に襲いかかった。
横浜高5番・塚田陸翔右翼手のレフト前も強烈な打球だったが、その後の6番・冨田進悟左翼手のライト前は、打球が速すぎて球道を見失ってしまった。一塁手、二塁手ともに1歩も動けなかった弾丸ビーム。こんな打球を打つヤツが、「6番」なのか。
“最近の高校野球は、上手くなり過ぎたんじゃないですかねぇ”
解説のマイクに、思わず言いそうになって、呑み込んだ。