バスケットボールPRESSBACK NUMBER
川崎ブレイブサンダースの「7分間」。
“とどろき”の快感が身体に残る理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2020/08/19 11:30
Bリーグは試合前演出に力を入れているチームが多いが、その中でもブレイブサンダースの盛り上がりは屈指だろう。
バスケは応援の影響が大きい競技だ。
バスケットボールはメジャーな球技のなかでも、観客が勝敗に影響を及ぼす度合いが最も大きなスポーツの1つだ。
例えば、フリースローのとき、身体を動したり、ブーイングしたりすることで邪魔できる。相手の得点の確率を左右するためにあそこまでダイレクトに、ファンがかかわれる競技は他にはない。
何より試合に参加している実感を得ることで、来場者の満足度は飛躍的に向上する。
バスケットボールのファンの特権は、「観」戦ではなく「参」戦できるところにある。
社長の号令にはじまり、スタッフの献身があり、音楽のプロの力があり、現場の選手の声があった。それが、あの7分間に凝縮されていたのだ。
昨シーズンの川崎の勝率 .775
これは初年度につぐ2番目のものだった。
昨シーズンの“ホームゲームの”勝率 .800
Bリーグ4年目にして、川崎の最高勝率を記録した。
ファンが楽しめる空間が、チームの成績にも結びつく。スポーツエンターテインメントの醍醐味が、川崎のとどろきアリーナにあったのだ。
言葉は忘れても、身体は忘れない。
コロナのせいで、満員のアリーナでバスケットボールを楽しめる日が来るのは、まだ先になりそうだ。
川崎もオンラインサロンをはじめとしたオンラインでの施策を増やしている。アリーナで参戦するよりも、映像を通して観戦する人数が多いような状態がしばらくは続くかもしれない。来場者ではなく、映像の視聴者の目に映えるような演出も中継のスタッフとともに探っていくつもりだ。
仮にアリーナが再び人であふれるのが1年以上先になったとしても、昨シーズンやってきたことが無駄になるわけがない。
簡単に言葉で表わされる体験なんて、時間がたてばあっさり忘れてしまう。
でも、身体で覚えた感動は、時間が経っても忘れない。一度、身体で覚えた自転車の乗り方を忘れる人がいないように。
昨年の10月から、リーグが中断するまでの5カ月あまり。あの雰囲気を体験した者にとって、コロナによる様々な制約を受ける今のこの時間は、満員のアリーナで再び感情を爆発させるまでの助走期間なのである。