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川崎ブレイブサンダースの「7分間」。
“とどろき”の快感が身体に残る理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2020/08/19 11:30
Bリーグは試合前演出に力を入れているチームが多いが、その中でもブレイブサンダースの盛り上がりは屈指だろう。
最後の仕上げはスチャダラパー。
腹をくくった東岡が手にしたのは、ストップウォッチだった。
Bリーグの全チームの演出を1つずつ調べていくことにしたのだ。
7分間にどんなジャンルの曲が使われているのか。それぞれの曲は何分ずつ流れるのか。曲が切り替わるタイミングはどうか。
使用されている曲に合わせて手拍子をして、曲のテンポについても細かくメモしていった。
演出の最適解を探るための因数分解である。
心地の良い流れ、会場のボルテージを上げていくような流れのイメージとエッセンスは地道な努力を重ねることでわかってきた。ただ、いくら徹底的に研究しても、それを実際に音楽で表現できなければ何の意味もない。
そこで大きな役割を担ったのが、スチャダラパーだった。ちょうど2年前から、川崎はホームゲームの音楽のプロデュースを、この日本のヒップホップシーンの草分け的存在に依頼していたのだ。
東岡が頭にあるイメージを伝えると、ふさわしい曲を提案してくれる。曲が決まったあとも、イメージするノリとテンポになるように、ミックスしてくれる。まさにプロの仕事だった。
スチャダラパーに伝えたのは、端的にいえば、ノリやすいけれども、難しくはないものだった。
「ここ数年で動員数が一気に増えてきているというのは、それだけ新規のファンが増えているということですよね? 以前から支えてくださったファンの方も大事ですが、初めてきた方、観戦経験が少ない方にも、楽しく、良い体験をしてもらうということを第一に考えました」
初お披露目から大成功。
7分間でかける曲の数は、既存の2曲に1曲を足し、計3曲になった。ただ、既存のものについてもリミックスしてもらい、さらなるエッジを利かせた。
おかげで、客席に与える印象は大きく変わった。
東岡がガッツポーズをしたのは、ホーム開幕戦である宇都宮ブレックスの試合だった。新調した7分間の演出の初お披露目だったにもかかわらず――。
「初めてなのに、きちんと一体感が生まれていたんですよね。みなさんがちゃんとノれるように、色々な仕かけを、凝縮して。あそこで全ての演出がバチっとはまったときには、もう、快感でしたね。そこはやっぱり、社長の元沢も評価してくれましたし(笑)」
試合は強豪ブレックス相手に苦しい時間帯もあり、最大14点差をつけられながらも、最後には逆転勝ちを収めた。
篠山が言う。
「まず、僕らの気持ちはノりやすくなりました。そして、ホームでお客さんたちが一体となってノってくれれば、試合のなかでは本当に大きな渦となって、流れを生んでくれると思うので。昨シーズンはこれまでで最もお客さんと一体になって、盛り上がれるような環境ができていたんじゃないかなと思います」