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川崎ブレイブサンダースの「7分間」。
“とどろき”の快感が身体に残る理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2020/08/19 11:30
Bリーグは試合前演出に力を入れているチームが多いが、その中でもブレイブサンダースの盛り上がりは屈指だろう。
わかりづらくても効果があることを。
2018-19シーズンより運営会社が東芝からDeNAにかわったが、この2年の施策は大きく2つの段階にわけられる。
1年目 世界観の変化:目に見える、わかりやすい改革
2年目 機能性の向上:一見するとわかりづらいが、観客が心地よく過ごすための改革
一例を挙げよう。1年目には、アリーナ中央部の天井から吊り下がるセンターハングビジョンを導入した。5000万円近くかかるというビジョンの登場はインパクトがあった。
だが実は、試合中に表示できるリプレーの質や多彩さが飛躍的に向上したのは2年目のことだ。高度な映像機材とそれを操る業者の力によるものだ。
派手な改革によるインパクトの賞味期限なんて、せいぜい1年である。
2年続けて伸び率がリーグトップになったのは、細やかな改善がファンの心に届いた何よりの証拠である。
選手に言われた「どうも一体感が……」。
そして、試合前の7分間にこだわったのにはもう1つ理由があった。
選手の背中を押すため、だった。
川崎のアリーナコミュニケーション部には、演出進行を担当する東岡奈実という人物がいる。およそ2年前、DeNA体制になったタイミングで入社した。前職はイベント制作会社のスタッフで、イベントの音響からブッキングまで8年かけて一通り経験してきた。
しかしDeNA体制になった初年度に、ヘッドコーチを務めていた北卓也(現GM)との雑談のなかの何気ない一言にハッとさせられた。
「今シーズンは会場の一体感が出せていないよねぇ」
演出進行担当としては、聞き捨てならない言葉だった。
さらに、選手たちからのフィードバックされた課題もこうだった。
「どうも一体感が……」
キャプテンの篠山竜青は、現場の意見を伝えた理由をこう明かす。
「来てくれるお客さんを楽しませたいなという意図があったとは思いますし、そういう試み自体はありがたいのですが、試合が始まる前のギリギリまで、ちょっとしたイベントをコートの端でやっていたり、アナウンスがあったりして。試合開始前はもう少しカッコよく、試合に向けて高まっていくようにしてほしいとは伝えた記憶があります」
東岡は言う。
「実際にあのコートで戦っている人たちに言わせてしまった責任を感じました。社長の元沢から強調されたのも、選手の背中を押すような一体感を作って、最初のプレーにむけて盛り上げるというミッションでした」