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甲子園がないことは本当に不幸か。
早見和真「高校生はバカじゃない」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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posted2020/08/14 11:05

甲子園がないことは本当に不幸か。早見和真「高校生はバカじゃない」<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

甲子園の中止で野球が楽しくなったという高校生がいる。そのことに早見さんは衝撃を受けたという。

高校生はバカじゃない。嫌ならやめている。

――甲子園、いらないのでしょうか。

早見「この夏、甲子園のある例年以上にカタルシスを得られたという選手もいるかもしれませんよね。そういう目線は持っておく必要があると思っています。世間からは一方的にかわいそうだと被害者扱いされていますけど、勝手にそう決めつけるのはおかしいんじゃないかと思っています」

――少し話はそれますが、ここ数年、夏の甲子園の時期になると、必ずと言っていいほど「高校野球は残酷ショーだ」というバッシング記事がネットに挙がっていました。ああいった意見に対してはどう思われますか。

早見「あくまで個人的な感想ですけど、僕は同意できません。そこまで高校生はバカじゃない。嫌なら野球部をやめればいいんですから。これまでの高校野球賛美に対するカウンターとしてならいいんですけど、あまりにも断罪し過ぎている感じがありますよね」

――投球過多の問題が起きると、選手の健康うんぬんという話が出てきて、それはもちろんそうなのですが、ありとあらゆるチャンピオンスシップスポーツは、極論かもしれませんが、そもそも健康に悪いことをやっているわけですよね。レクリエーションではないわけですから。命を削っているような面が少なからずある。「健康」という言葉を持ち出したら、ボクシングなどの格闘技はそもそも成立しなくなる。おっしゃる通り、なんか論が行き過ぎている。

早見「すべての話が、当事者を置き去りにしているんですよね。高校生は判断できないから、そこは大人が決めてやるべきだっていう風潮を感じるんですけど、高校生は絶対に自分で判断できる。問題は、言うことを聞かせて子どもから意見を表明する自主性を奪っている大人の方ですよ。それが100年続いてきた高校野球なんだと思います」

――自分の意見を言うことが「悪」とされ、素直さが「善」とされる文化がありますもんね。2年前にスペインから日本に帰って来た、あるアスリートの方が「なぜ日本人の親は生意気だと言って怒るんだろう」と不思議そうに話していました。まったく同感で、生意気は自信と置き換えることもできると思うんです。

 2年前、金足農業が準優勝したとき、自信に満ちた選手たちを見て、若者の自信はなんと美しいのだろうと思いました。日本の高校野球文化は、ともすればその自信を「悪」と見なしかねない気がするんです。

早見「選手の意見を頭ごなしに押さえつけて、思考停止させてコマのように動かして、その先に勝利や甲子園があった……という成功体験があるんでしょうね」

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