野ボール横丁BACK NUMBER
甲子園がないことは本当に不幸か。
早見和真「高校生はバカじゃない」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph bySports Graphic Number
posted2020/08/14 11:05
甲子園の中止で野球が楽しくなったという高校生がいる。そのことに早見さんは衝撃を受けたという。
「甲子園でいい思いをした人の割合は0.1%」
――大人たちが甲子園を利用し、自分たちの価値観を押し付けてきた歴史のように思えるときもありますよね。
早見「どうしてそれだけが正解だって信じ込めるんだろうと」
――早見さんは高校野球を経験したことを後悔していますか。どうであれ、桐蔭学園時代の野球があったからこそ、今の早見さんがいるようにも見えますが。
早見「後悔はしていない、って言い切りたくはあるんですけど、それはあくまで結果論じゃないですかね。僕はたまたま嫌な過去を利用できましたけど、40歳になってもまだ高校野球を恨み倒している人も実はいっぱいいるんじゃないでしょうか。もし、僕が小説を書くという手段を持っていなかったら、そちら側になっていたかもしれません」
――私も含めてですが、メディアは基本的に甲子園でいい思いをした人ばかりを取材していますからね。敗者であっても、敗者になれただけでもいい。そこのグラウンドにさえ立てなかった者の思いまでは、なかなか汲み取れていない。
早見「甲子園でいい思いをした人なんて高校球児全体の0.1パーセントぐらいじゃないですか。甲子園なんて夢のまた夢だったという人が9割。残りの9.9パーセントは、甲子園があったから高校野球に恨みを抱えているという人である気がします」
(【3/3】早見和真が語る甲子園の魔法の行方。17歳の違和感と「結局、大好き」。 を読む)
文藝春秋BOOKS
あいつら、普段はパッパラパーだけど、野球だけは本気だったから。(女子マネ) 2018年夏の甲子園。エース吉田輝星を擁して準優勝、一大フィーバーを巻き起こした秋田代表・金足農業は、何から何まで「ありえない」チームだった。きかねぇ(気性が荒い)ナインの素顔を生き生きと描き出す、涙と笑いの傑作ノンフィクション。
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