スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
波瀾含みの開幕と集団感染。
マーリンズの危機は克服可能か?
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/08/01 08:00
開幕直前の21日、アトランタ・ブレーヴスとの練習試合に臨んだマーリンズ。選手たちがアトランタの街を遊び歩いていたという疑惑も報じられている。
野球はタフだ、野球はへこたれない、と。
「野球だけは大丈夫」――私も含めて大リーグ開幕を望んでいた人々の多くは、恐慌や戦争など、大きな危機を何度も乗り切ってきた野球の復元力に一縷の望みを残してきたはずだ。
野球はタフだ、野球はへこたれない、と。
実際の話、球界は最近も、難局に際していくつかの解決策を提示している。
カナダ政府がアメリカ市民の入国を禁止し、ブルージェイズがトロントでプレーできないと決まったときは、ニューヨーク州バファローが仮の本拠地に設定された。ロサンジェルスやワシントンDCでは、先ほど紹介した《濃厚接触者は14日間の隔離》という地方条例を、大リーガーに限って免除する特例措置を発表した。
どれもこれも、野球に対する信頼と、野球に託した希望の大きさを示す逸話だと思う。だがいまは、その信頼や希望の橋がぐらつきはじめている。いますぐにも橋が崩れ落ちることはないと思うが、危うい状態に置かれていることはたしかだ。
《2日に1度のPCR検査》という取り決めも、検査結果の判明までに長い時間がかかるようでは、なかなかリスク回避につながらない。
7月29日現在、アメリカでの新型コロナウイルス感染者数は約435万人で、死者の数は15万人に届こうとしている。残り8週間、このぐらついた橋を大リーグがなんとか渡り終え、ゴールのテープを切ることができるとよいのだが。