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「田澤ルール」は日本にとって損。
侍ジャパンにも影響、再考すべき。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKYODO

posted2020/07/17 11:50

「田澤ルール」は日本にとって損。侍ジャパンにも影響、再考すべき。<Number Web> photograph by KYODO

独立リーグ「ルートインBCリーグ」埼玉武蔵ヒートベアーズと契約した田澤。記者会見で「少しでもそういうルールがなくなってくれれば」と語っていた。

一番、損をしているのはNPB。

 2021年に予定されていた第5回WBCは新型コロナウイルスのパンデミックによって延期され、大会そのものの今後の行方も不透明になっている。

 ただ野球の競技人気を支えていくためには国際化は必須の道であり、それは日本球界を取り巻く状況も同じはずだ。

 その中でメジャーで活躍する選手たちを侍ジャパンとして招集するなら、「田澤ルール」はいかにも矛盾した制度となるということだ。

「2年間のルールには、従わなければならないと思っています。ただ少しでもそういうルールがなくなってくれればいいなという気持ちも、個人的にはあります」

 ヒートベアーズの入団会見で田澤は改めてルール撤廃の願いを吐露している。

 そもそも田澤はこのルールができる前にレッドソックスとの契約の意思を表明していた。遡及してこのルールが適用される対象なのかも論議されて然るべき問題の1つだろう。

 ただNPBがそんなルールに縛られる中でも、独立リーグという受け皿があったことは、日本の野球界にとっては喜ぶべきことかもしれない。そして逆に考えると、こんな制度で実は一番、損をしているのもNPBだということに気づくべきなのだ。

メジャーでの経験を伝えられる貴重な人材。

 メジャーを経験した投手が日本に戻ってプレーをすることの価値は、広島の黒田博樹投手や巨人の上原浩治投手、野手でもヤクルトの青木宣親外野手らがこれまでにも散々示してきてくれている。

 チームにとって、特に若い選手たちにとっては、彼らの野球への取り組み方を含めて一挙手一投足が勉強になり、将来への大きな財産となるはずである。

 田澤の場合もメジャーの過酷な環境の中で中継ぎ投手がチームの中でどういう立ち位置にあり、試合ではどんな調整をして、どういう心構えでマウンドに上がっているのかを伝えられる貴重な人材のはずなのだ。

 何よりマウンドに立って実際にどんなピッチングをするのかは、戦力としてだけでなくチームとファンにとっては大きな魅力なのである。

 そういう貴重な選手の復帰を拒絶する制度が「田澤ルール」だ。NPBだけでなく日本球界にとっても時代遅れの負のルールと言わざるを得ない。

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田澤純一
埼玉武蔵ヒートベアーズ
ボストン・レッドソックス

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