プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「田澤ルール」は日本にとって損。
侍ジャパンにも影響、再考すべき。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/07/17 11:50
独立リーグ「ルートインBCリーグ」埼玉武蔵ヒートベアーズと契約した田澤。記者会見で「少しでもそういうルールがなくなってくれれば」と語っていた。
海外に行く才能を止めることはできない。
田澤はメジャーで成功を収めている。
すでにトータルで25億円近くの年俸も稼いで、日本球界を経ずにメジャーと契約した最初の成功者となった。その事実は日本のプロ野球を経なくても、メジャーでやれるチャンスがあることを改めて示したものだった。
ここ数年は故障やスランプに苦しんだ時期もあった。
ただ今季のオープン戦では2月24日(現地時間)のレンジャーズ戦で1回を被安打1、1奪三振で無失点に抑えて復活への手がかりを見せてもいる。
メジャーでの経験と実績を考えたら、このオフにはNPBの球団がドラフト指名に名乗りを上げてもおかしくないはずだが、その可能性を「田澤ルール」が絶っているのである。
「田澤ルール」が出来てすでに12年の月日が経っている。
その間にこのルールの対象となるのは、'18年にパナソニックからアリゾナ・ダイヤモンドバックスとマイナー契約を結んだ吉川俊平投手のみだった。
この事実はそれなりの抑止力が働らいているようにも見えるが、その一方でそんなルールを作っても海外に飛び出していく才能を止めることはできないということを同じように示している。
日本代表へのオファーの時点で再考すべきだった。
そしてこの12年間で日本の野球を取り巻く環境は大きく変わった。
特に大きいのは「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」や「プレミア12」などが開催されて急速に進んだ国際化の波だろう。
実は2017年の第4回WBCでは、田澤に日本代表入りのオファーがあった。
NPBは「田澤ルール」で復帰への障壁を設けながら、自分たちの都合で代表入りを依頼した訳だ。
結果的にはこのときは田澤がマイアミ・マーリンズ移籍1年目で代表入りを辞退したが、少なくともオファーの時点で「田澤ルール」の再考も話し合われて然るべきだったはずである。