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古田、谷繁ら名捕手と並ぶために
カープ會澤翼が乗り越えるべき壁。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/07/08 11:15

古田、谷繁ら名捕手と並ぶためにカープ會澤翼が乗り越えるべき壁。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

昨季は自己最多126試合に出場して打率.277、12本塁打、63打点と「打てる捕手」を証明した。

昨季、初めて規定打席に到達。

 広島の正捕手となり、3連覇を経験した。昨年は侍ジャパンの1番手捕手として、世界の舞台で頂点に立った。今や球界を代表する捕手も、規定打席到達は昨季が初。肉体的な負担を考慮して、石原慶幸らと併用されるシーズンが続いた。

 プロ入りからケガとの付き合いだった。入団2年目の2008年に左肩を手術し、'12年8月には鼻骨骨折。正捕手をつかみかけた'14年9月には右太もも肉離れで戦列を離れた。'17年から続けるシーズンオフの護摩行も、そんな自分との決別を期したからだった。

 捕手というポジションは無傷ではいられない。投手が思いきり腕を振れるように身を挺して支える。昨季リーグ3位タイだった死球はここまで同最多の3個。シーズン中は体にあざがない時間の方が短い。一昨年、昨年も公表、公言はしなかったケガはある。

 主力の負傷離脱を避けるため、コンディションに細心の注意を払って休ませながらの起用もひとつだろう。だが、會澤が捕手としてまた一段階レベルを上げるためには、いつかは乗り越えなければいけない壁でもあった。

リード面の苦心が打撃に影響?

 歴史が物語る。近年でも古田敦也、谷繁元信、阿部慎之助と、名捕手と呼ばれた捕手たちはグラウンドに立ち続けてきた者ばかり。パ・リーグでは今年もソフトバンク・甲斐拓也や西武・森友哉はほぼ1人でスタメンマスクをかぶり続けている。捕手は試合に出続けることで見えてくる景色も変わってくる。

 もちろんプラスばかりではない。リード面の苦心が、昨季2割7分7厘だった打率が今季ここまで2割2分2厘となって表れている。3カードすべてに出場すれば、1人の打者と12打席ほど対戦するだけに、頭の中は配球のことで埋め尽くされているだろう。

「打てる捕手」と鳴らした會澤が今後、守備と打撃の両立をどうのように発揮していくのか。打率が低調な中でも今季初打点、2打点目は狙ったような遊ゴロのチーム打撃で挙げたものだった。

【次ページ】 女房役と頼られ、兄貴と慕われ。

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