炎の一筆入魂BACK NUMBER
古田、谷繁ら名捕手と並ぶために
カープ會澤翼が乗り越えるべき壁。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/07/08 11:15
昨季は自己最多126試合に出場して打率.277、12本塁打、63打点と「打てる捕手」を証明した。
女房役と頼られ、兄貴と慕われ。
新たな経験が視界を広げるとともに、自分の可能性も広げる。
今の広島は大瀬良大地と鈴木誠也が投打の柱となっている。そんなチームを支える大黒柱が會澤だ。大瀬良はバッテリーを組む女房役としても頼りにし、鈴木誠は「今、一緒にやっていて普通のことですが、一緒に野球がしたい人」とチームスピリットを体現するアニキとして慕う。勝利への意識、チームを思う献身性、言葉と行動が伴う男気がチームメートからの信頼となっている。
選手会長に就任した'18年は、伸びた襟足を刈り上げ、無精ひげも剃り上げた。ワイルドキャラから一転、チームの見本となるべく身なりから整えた。
チームは3連覇を経て、まだ転換期にいる。
再び昇るか、落ちるか――。
勝ちパターンが確立されず、三塁のレギュラーも決まらず、連勝スタートから開幕12試合目に勝率5割を切った。戦力的な課題や戦術だけでなく、チームとしての成熟度を高めていかなければいけない。會澤が影響力を発揮する機会はまだ多くある。
本人も自覚はしている。昨年まで務めた選手会長のポストは田中広輔に託しても「変わらずにやろうと思っている」と言っていた。今年は新会長に寄り添いながら、サポートしようとする姿が目立つ。
先頭で引っ張ってきた役割から、今年は縁の下から支える役割。見える景色が変われば、また言動も変わる。32歳は、まだまだ成長できる。