球体とリズムBACK NUMBER
ベルマーレらしさと新機軸の葛藤。
“湘南スタイル”をどう昇華する?
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/07 19:00
相手より走り勝つ。体制が変わっても湘南スタイルとはそのイメージが浸透している。そのチームが2020年、どんな顔を見せるのか。
高みを目指すうえで必要な道だが。
むろんこのスポーツを進める手法を、ポゼッションとカウンターだけの二元論で片付けることはできないし、現在の世界のトップレベルはどちらも高度にできるチームが多い。その意味では、ベルマーレがさらなる高みを目指す上で進むべき道と言えるかもしれない。
ただしチームや選手には特性があり、技量や自信の水準もある。率直にいうと、今の湘南からは、パスを繋ごうとするあまり、かつてのようなスピード感が薄れている印象を受ける。
またトラップやパスのミスが多くて、テンポよくボールがつながるシーンは多くない。ファンがいなくて集中力の維持が難しいのかもしれないが、それはプロとして好ましいエクスキューズではない。いずれにせよ、より効果的に見えたのは、坂圭祐ら最終ラインからの大きなフィードや、終盤のパワープレーだった。
「湘南らしく戦えるように」
おそらく長い中断期間に、ベルマーレはパスサッカーに磨きをかけようとしていたのだろう。その挑戦自体は肯定すべきものだし、若いチームには伸びしろが多く残されているはずだ。湘南の選手たちだって、がむしゃらに走るだけではない。当たり前だ。
ただ“湘南スタイル”というお馴染みのフレーズが、思わぬ足枷にならなければいいと思う。この言葉の確たる定義はないはずだが、通じているのは、選手全員が懸命に走る勢いのあるスタイル、だろう。彼らはそのやり方で、一昨季のルヴァンカップを制し、湘南ベルマーレとして初タイトルを獲得した。
それだけに──。
自分たちの強みを知っているだけに、新機軸の舵取りがうまくいかなければ、中途半端になってしまう可能性も否めない。
「修正するところを修正して、湘南らしく戦えるように良い準備をしたいと思います」
主将の岡本はそう締めくくった。この言葉が意味するものは何だろうか。水曜日の横浜F・マリノス戦で確認したいと思う。