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哲学を捨ててカネを取ったバルサ。
アルトゥール放出は暗黒の序章か。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2020/07/05 11:40
かつてのシャビ的な役割を期待して獲得したはずのアルトゥール。彼を生かせぬまま放出したバルサ強化部の責任は重い。
ブラック企業並みの“人材定着率”。
それにしても、ここ数年のバルサの“人材定着率”の低さは、まるでブラック企業並みだ。
2015年の夏から'19年の冬までに獲得した新戦力で、3年と経たずにチームを離れた選手は数知れない。
アルダ・トゥラン(現無所属)、アンドレ・ゴメス(現エバートン)、パコ・アルカセル(現ビジャレアル)、リュカ・ディニュ(現エバートン)、パウリーニョ(現広州恒大)、ジェラール・デウロフェウ(現ワトフォード)、ジェリー・ミナ(現エバートン)、フィリペ・コウチーニョ(現バイエルン)、マウコム(現ゼニト)……。
現在レギュラークラスに名を連ねているのは、2018年夏に入団したアルトゥーロ・ビダルとクレマン・ラングレくらいだ。
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これほどの補強下手でも、過去5シーズンで4度のリーグ制覇を成し遂げられたのは、メッシというスペシャルな存在があったことに加え、ネイマール(現パリSG)を獲得した2013年夏、マルク・アンドレ・テア・シュテゲン、イバン・ラキティッチ、ルイス・スアレスをまとめ買いした'14年夏と、2年連続で“当たり年”に恵まれ、その遺産を食いつないできたからに他ならない。
しかし、ここまで新戦力を定着させることができない状況が続けば、近未来の破綻は目に見えている。主力の高齢化が進み、下部組織からの人材供給が滞りがちな現状を踏まえればなおさらだろう。
問われるべきは「ペップの罪」?
では、2018年1月にクラブ史上最高額で獲得したコウチーニョをはじめとする一流のタレントたちが、バルサにやって来た途端、輝きを失ってしまうのはなぜなのか。それはウスマン・デンベレしかり、今シーズンのアントワン・グリーズマンしかりである。
起用法、故障の多さ、プロ意識の欠如など理由はさまざま考えられるが、個人的には「ジョゼップ・グアルディオラの罪」も問われるべきだと思っている。
ペップは「メッシによるメッシのためのサッカー」を構築することでバルサに数々の栄光をもたらしたが、一方でその偉大なる成功は、いつしかメッシを神格化し、誰も寄せ付けない不可侵の領域にまで押し上げてしまった。