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哲学を捨ててカネを取ったバルサ。
アルトゥール放出は暗黒の序章か。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2020/07/05 11:40
かつてのシャビ的な役割を期待して獲得したはずのアルトゥール。彼を生かせぬまま放出したバルサ強化部の責任は重い。
アセンシオの復帰即得点に見えたもの。
第29節バレンシア戦の74分、ジダンはプレシーズンに負った膝の大怪我がようやく癒えたマルコ・アセンシオの肩を抱き、笑顔で言葉を掛けながらピッチに送り出した。アセンシオも満面の笑みだ。直後、帰ってきた背番号20がファーストタッチで素晴らしいゴールを突き刺すと、すべてのチームメイトが我がことのようにそれを喜び、祝福した。
この一連の流れに、マドリーの良好なチーム状態が凝縮されていたように思う。
特定の個のためではなく、チームのためにプレーする。誰一人として「チーム以上の存在」にはならない。当たり前のことが当たり前にできるのが、今のマドリーだ。その中でフェデリコ・バルベルデ、ビニシウス・ジュニオール、ロドリゴらの若手逸材が台頭し、チーム内競争を活性化させている。
久保を含めて有望株を見ても……。
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さらに、マルティン・ウーデゴー(レアル・ソシエダ)、アクラフ・ハキミ(ドルトムント)、久保建英(マジョルカ)など、レンタル先で飛躍的な成長を遂げているヤングタレントも少なくない。
今シーズンのラ・リーガは、停滞感が否めないバルサを横目に、再開後は快調に飛ばすマドリーがこのまま先頭でゴールテープを切る可能性が高い。
だが、もしかすると3週間後のチャンピオンを予想するよりも、向こう3年、あるいは向こう5年の勝者を予想する方が、よほど簡単なのかもしれない。
アルトゥールの放出をきっかけに、バルサが坂道を転がり落ちていく。そんな未来も、容易に想像ができるのだ。