スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
試合取材できずバルセロナのバルで
リーガ観戦したら、想定外だらけ。
posted2020/07/06 11:30
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Taku Kudo
ラ・リーガ再開から3週間。非常事態宣言が解除された後も取材規制は続いており、ほぼ毎日テレビで試合を見続けている。
はじめは目新しさがあった無観客の光景も、毎度代わり映えがしないのですぐに飽きてしまった。やはりフットボールにはファンの熱量が欠かせない。
だが記者としてもファンとしてもスタジアムに入ることができない現状、できることは限られている。
だからフットボールの雰囲気を求め、久々にバル観戦に繰り出すことにした。
毎週600万人もバル観戦していたが。
ラ・リーガによれば、スペインでは毎週600万人ものファンがバルでフットボールを観戦しているらしい。外務省データによると人口4700万人弱なので、約12.8%の国民が毎週バルでセルベッサ(ビール)を消費している計算になる。
しかもそれはコロナ禍前のデータである。
スタジアム観戦ができない現在は、フットボールを求めさまよう子羊たちが街中に溢れているに違いない。そんな光景を想像しつつ、以前から気になっていた近所の老舗っぽいバルに足を踏み入れたのだが、その後は想定外の連続となった。
どこも入店制限を義務付けられているので、事前に席を確保した方がいいだろう。そう考え、バルサ対アスレティックの前日に挨拶がてら店に行くと、こう返された。
「明日はやめた方がいい。サンフアン前夜だから、常連は誰も来ないと言っているよ」
聖ヨハネの祝日、サンフアン。その前夜は街中で花火や爆竹が鳴り響き、翌朝には火傷した人々が病院に行列を作るという、恐ろしい祭りである。
夏のはじまりを告げるこのクレイジーなイベントは、スペインの人々にとってフットボールの試合よりずっと重要なものだ。近年は出張でスルーすることが多かったためすっかり忘れていたが、今回は流れ弾を食らわないよう気をつけようと肝に銘じた。