球体とリズムBACK NUMBER
クロップの熱いリバプール優勝談話。
「重圧を背負ってきたジェラードに」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2020/06/26 20:00
リバプールの30年ぶりリーグ制覇で、聖地アンフィールドはこんな状況に。クロップ監督率いるチームはついに重い扉を開いた。
アーノルドが口火を切り、サラー。
トレント・アレクサンダー=アーノルドが口火を切ったのは、実に今のリバプールを象徴している。
クラブの目と鼻の先で生まれ育った生粋のスカウザーは、21歳にしてすでに世界最高のSBと謳われるまでに成長。特にキックの精度と威力が劇的に高まっており、この試合では23分に見事な直接FKを本拠地で初めて叩き込んだ。
現在、リーグのアシスト数(12)でケビン・デブライネ(16)に次ぐ2位、クロス数ではデブライネ(254)に約80本もの差をつけて首位(332)。新時代のレッズの旗頭がどこまでの選手になるか、中立的な立場からも楽しみだ。
前半終了間際には、再開初戦を欠場したエースのモハメド・サラーが相手最終ラインの裏に抜け出し、ファビーニョの浮き球を受けて流れるように追加点。これまでに何度も見てきたエジプトの王様が得意とする形で、今季のチーム100点目(全公式戦を通じて)が刻まれた。
ファビーニョの超低空ミドルはオリセー級。
その得点をアシストしたファビーニョは現チームの最重要選手のひとりだ。
昨季開幕前に加入したブラジル代表は徐々にチームに馴染んでいくと、昨季途中から中盤の底で絶大の存在感を放つようになり、チャンピオンズリーグ優勝にも大きく貢献。今季もそのまま要所を任され、GKアリソンやCBフィルジル・ファンダイクらと共に、ここまで1試合平均0.67の堅守を構築した。
この試合では、自陣ボックス内で相手に一度もボールタッチをさせなかったという驚愕のデータも生まれている(Optaがこのデータを記録し始めた2008-09シーズン以降で初)。そしてファビーニョは後半、凄まじいミドルでチームの3点目をマーク──1998年W杯の激戦、スペイン対ナイジェリア戦でサンデー・オリセーが放った決勝点を想起させるような一撃だった。
最後はダイナミックなカウンターからサディオ・マネが決めて4-0の完勝劇を締めくくった。
エバートンの本拠地グッディソン・パークとは異なり、アンフィールドには音響の工夫がなく、音の少ない練習試合のような雰囲気ではあったけれど、ピッチ上で展開されていたのは極上のエンターテイメントだった。