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クロップの熱いリバプール優勝談話。
「重圧を背負ってきたジェラードに」
posted2020/06/26 20:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
望まれた形ではなかったものの、リバプールが30年ぶりのイングランド1部リーグ優勝を決めた。
彼らは現地時間24日にホームでクリスタル・パレスに4-0で圧勝しており、翌25日に2位マンチェスター・シティが敵地でチェルシーと引き分け以下の結果に終わると、クラブ史上19度目のリーグタイトルを手にすることになっていた。
そしてチェルシーが2-1でシティを下すと、マージーサイドでは多くのリバプールファンが外に出て、宿願のリーグタイトルを盛大に祝ったようだ。
現地メディアが報じた映像を見ると、空には花火が上がり、人々は独特のアクセントで歓喜の言葉をまくしたて、暗闇に包まれたアンフィールドの門の上では赤い発煙筒が焚かれていた。優勝したチームの地元の風景としては、どのシーズンともほとんど変わらないものだ。
コロナ禍の中止危機を乗り越えて。
だがもちろん、今季はほかのシーズンとは異なるものだった。新型コロナウイルスの影響で3月上旬の第29節を最後にリーグが中断され、再開の目処が立たない頃には、シーズンをなかったものにするという可能性も検討されていた。それはつまり、中断された時点で後続に25ポイントもの大差をつけて首位を独走していたリバプールの優勝が、認められなくなるというものだ。
「その話が出た時は、わお、それは本当に本当に受け入れがたいものだと感じていたよ」とリバプールのユルゲン・クロップ監督は、リーグの再開が決まった後に話していた。
フットボール発祥地を代表する名門クラブのひとつ、リバプールの歴史には、栄光の陰に悲しみがある。今季のプレミアリーグが途中で終わっていれば、ヘイゼルの悲劇、ヒルズボロの悲劇、スティーブン・ジェラードのスリップらに続き、COVID-19のタイトル剥奪などと呼ばれることになったかもしれない。
しかしリーグの再開が決まると、初戦こそ敵地でのマージーサイドダービーをゴールレスドローで終えたものの、実質的に優勝を決めたクリスタル・パレス戦では、諸々の鬱憤を晴らすように赤いマシンが爆発した。観客のいないアンフィールドには映像からでも異様な静けさを感じたが、ピッチ上には試運転を経て本当の姿を取り戻したリバプールの姿があった。