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オーナーの意向とコミッショナー。
MLB版「三方一両損」を提案する。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/06/20 09:00
6月10日、MLBドラフトの開会スピーチをするマンフレッドコミッショナー。1994~95年のストライキではオーナー側の法律顧問を務めた。
姿勢がオーナー寄りになるのは、避けがたい。
ヴィンセント追い落としの急先鋒に立ったのが、当時ブルワーズのオーナーだったバド・セリグである。そのセリグが、'92年9月からコミッショナー代理(実質的にはコミッショナー)をつとめ、'98年7月からは正式にコミッショナーに就任する。球団オーナーだった人物がコミッショナーに就任したのは、アメリカ野球始まって以来のことだ。
元弁護士のマンフレッドは、そんなセリグの右腕として活動してきた。セリグの跡を継いでコミッショナーに就任したのは、2015年1月。スタットキャストを採用したり、キューバ野球連盟と移籍制度で合意したりと功績も大きいが、姿勢がオーナー寄りになってしまうのは、どうしても避けがたい。
「三方一両損」のロジックを提案したくなる。
これにしびれを切らした大物選手たちが、マンフレッドに向かって「いつ始めるんだ? どこでやるんだ? 俺たちに言ってくれ」とツイッターで問い詰めはじめた。
ほんの数日前、マンフレッドが「シーズンは100パーセント開催される」と断言したことも大きい。ここで言葉を返し、3月の約束まで破ってしまったら、彼に対する周囲の信頼は大きくゆらぐ。
もし大リーグを公正に運営しようとするのなら、マンフレッドは意地を張ってでも、オーナー側と一線を画する必要がある。
こういう混乱を見ていると、「三方一両損」のロジックを提案したくなる。
オーナー側や選手会が聞く耳を持つかどうかはわからないが、たとえば「7月中~下旬開幕/70~80試合/ワールドシリーズは11月/俸給は完全比例制」という案は実現不可能だろうか。
もちろんこれは、新型コロナウイルスの第2波が強大なものにならないと仮定した上での話である。