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オーナーの意向とコミッショナー。
MLB版「三方一両損」を提案する。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/06/20 09:00
6月10日、MLBドラフトの開会スピーチをするマンフレッドコミッショナー。1994~95年のストライキではオーナー側の法律顧問を務めた。
オーナーの吝嗇ぶりは、方々から聞こえてくる。
ざっと計算してみると、この場合、選手の俸給は半額程度の減少にとどまるし、TBS(ターナー・ブロードキャスティング)が「ポストシーズンの放映だけで10億ドルを払う」と手を挙げたこともあって、オーナー側の損害も1球団あたり2000万ドル程度ですむはずだ(ノー・シーズンの場合、各球団の損害は1億ドル前後に達するといわれている)。
観客も、とりあえずは不満を呑み込むのではないか。
それにしても、アメリカの雑誌や新聞に、オーナーたちのインタヴュー記事がこのところほぼ皆無なのは、どういうわけだろう。
「野球はあまり儲からない」などといった言い訳がましい発言だけは漏れ伝わってくるのだが、これとて首をかしげざるを得ない。ラジオでそう発言したのはカーディナルスのオーナー、ビル・デウィットJr.だが、彼が1995年に1億5000万ドルで購入した球団の資産価値は、いまや20億ドルを超えている。
これ以外にも、オーナーの吝嗇ぶりは、方々から聞こえてくる。
ナショナルズを保有するマーク・ラーナーとその一族は、傘下にあるマイナーリーガーの休業補償を、週に100ドル(!)減らそうとした。アスレティックスを保有するジョン・J・フィッシャーは、傘下に属するマイナーリーガーの給与打ち切りを表明し、世論の袋叩きに遭って、それをしぶしぶ撤回した。
ちなみに、ナショナルズの資産価値は19億ドル、貧乏球団と評されるアスレティックスでさえ、資産価値は11億ドルに達する。金持ちであること自体に罪はないが、ケチな金持ちは美しくない。もしオーナー側の譲歩を引き出すことができたら、マンフレッドの株はまちがいなく上がるはずだ。