野球クロスロードBACK NUMBER
球数ではない、メカニズムこそ重要。
則本、松井も頼る楽天トレーナー。
posted2020/06/19 07:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
3カ月も待たされたが、6月19日にようやく2020年のプロ野球が開幕する。
楽天イーグルスの“彼”はきっと「また忙しくなるなぁ」と苦笑いを作りつつ、心と体はウズウズしているはずだ。
今年も星洋介の怒涛のシーズンが始まろうとしている。
楽天での立場はコンディショニンググループのマネージャー。選手たちのコンディションを管理する仕事である。
主に投手を担当する星の大きな役割は、ピッチャー陣の「メカニック」の構築と調整だ。
メカニックとは、投手が投球モーションに入ってからボールをリリースするまでの動きの総称。
その投手にとって、足首や膝、股関節、肩甲骨、肩、肘、手首などの各部位ひとつひとつが正常に動いているか、そうするためにどこを鍛えなければならないのかを、星は常に管理している。もっとわかりやすく言えば、機械式時計のムーブメントをメンテナンスする時計職人のような仕事だ。
投手たちのメカニックを安定させるために、体の状態をチェックし、的確なトレーニングメニューを組む。故障を防止するためにストレッチなどのケアも行い、時には栄養指導をすることだってある。それらを円滑に進めるためには、彼らの声を聞き、精神の安定を促すことも大事となる。
星はそれを理解しているからこそ、「何でも屋」を受け入れる。
デーゲームなら起床は5時半。
彼の1日は長い。
ホームでのデーゲームならば、起床は早朝5時半。選手が来る前にトレーナールームを開放し、ケアの準備を整える。そして前日に登板した投手を中心に肩と肘の状態をチェックし、「今日も安全に登板できるか否か?」を判断する。
全体練習に入ると、ランニングなどのメニューを指示する傍ら選手の動きに目を凝らし、気になった選手にアドバイスを送る。試合が始まればトレーニングルームで登板の準備を進める投手のサポートをし、試合が終わると彼らのケアが待っている。球場を出るのは、決まって選手が帰った後になる。