「全力で投げてこい」と送り出す。

　松井が、星への想いをさらに重ねる。

「僕が星さんに感謝している一番の理由は、親身になって話を聞いてくれるところですね。3年目に肘を怪我したときなんか、キャンプからずっと丁寧にケアしてくれて。『今の状態を知るために、まだ少しは痛むかもしれないけど投げたほうがいい』って後押ししてくれたり。星さんに話を聞いてもらえばもらうほど、自分ってものがわかってきますよね」

　ここ数年、故障と向き合うことが多い釜田も、異口同音に星への感謝を口にする。

「いつでも親身になって話を聞いてくれるんですよ。自分、リハビリが多かったじゃないですか。あの期間って、どうしても落ち込んだりするんですよ。『もうダメなんじゃないかな？』みたいに。

　でも、星さんは『何言ってんだよ、お前。体の状態はいいんだから大丈夫だ。辛いだろうけど、自分がやってきたことを信じろ』って励ましてくれるんです。本当にね、星さんがいれば『よりいいものを作っていける』って実感させられるし、自信にもなりますよ」

　待ちわびたプロ野球が、始まろうとしている。球場にはいつもいるはずのファンはいない。だが、楽天の投手は胸を張り、前を向く。チームの中で、見慣れた顔が真剣な表情で頷いてくれるからだ。

　星が心のなかで叫ぶ。

「全力で投げてこい。いつだって万全な体を作ってやる！」

　マウンドで想いがシンクロする。家族の支えを胸に刻んだ投手たちが、力いっぱい腕を振り、拳を掲げる。

　全国のファンが沸く。楽天がひとつになる。