野球クロスロードBACK NUMBER
球数ではない、メカニズムこそ重要。
則本、松井も頼る楽天トレーナー。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2020/06/19 07:30
楽天でコンディショニングを担当する星洋介トレーナーは40歳。仙台育英で軟式野球を経験後、筑波大大学院でスポーツ医学を学んだ。
則本「いなくなったら困る人」
この星の考えをパフォーマンスで証明し続ける代表格が、投手陣の柱である則本昂大だ。昨年こそ野球人生で初めて右ひじを手術したが、2018年まで6年連続2桁勝利と、先発としての役割を果たす。それも、星とともに妥協なくメカニズムを構築し、コンディショニング全般に抜かりないからである。
言うまでもなく、則本も星に信頼を寄せる。
「星さんを信用してついていけば間違いない。何をどうしてもらっているからとか、そういう話じゃないんですよね。僕らがいつも安心して投げられているのは星さんがいてくれるから。正直、いなくなったら本当に困る人。それくらい、頼りになる男なんですよ」
今や楽天の生え抜き投手全員が、入団から星のサポートを受けている。則本も断言する「いなくなったら困る人」。それを聞いて、星に尋ねたくなった。
――仕事を続けるだけの原動力はあるのだろうが、辞めたくなったことはないか?
星が笑う。
すぐさま「ありますよ!」と返した。そして、「ちょっと長くなるんですけど」と断りを入れてから、想いを紡いだ。
お金になる仕事は他にもあるけれど。
「生まれ育った仙台で仕事ができていることが大きいんです。『地元に貢献したい』と言うとおこがましいですけど、僕としてはそれくらいの使命感や責任感を持って仕事をしているつもりです。
仕事はしんどい。プレッシャーもあるし、チームに同行している以上は簡単に休むことだってできない。正直、真剣にお金になる仕事をやろうとしたら、見つかると思うんです。それでも『楽天で頑張ろう』と思えるのは、やっぱり選手がいるからなんです。いろいろしんどくて『逃げちゃいたいな』とか気持ちが下がっている時に、選手が頑張っている姿を見ると『俺より、あいつらのほうが何倍もしんどいじゃん』って、つなぎとめてくれるんですよね。
ちょっと重い表現かもしれないですけど、僕にとって球団や選手は家族みたいなもんですから。家族が頑張ってるなら、俺も頑張らないとダメだろって。そこが僕のなかの核ですかね。実際、選手たちから好かれてるのか嫌われてるのかわからないですけど(笑)」
自分の評価は他人がするもの――。
楽天元監督の野村克也が何度も口にしていた格言だが、だとすれば星の評価はもう、わかりきっている。