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バイエルンが頼った敏腕スカウト。
川田尚弘が日本で中高生を探す理由。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2020/06/17 11:30
バイエルンがどこにも負けないクラブを目指す以上、どこにもいない選手を自分たちで教育する必要があるのだ。
18歳以下の国際移籍は禁止では?
ただし、ここで1つ疑問がある。FIFAは18歳未満の国際移籍を原則禁止しており、日本の中学生・高校生はバイエルンに加入できない。正確には例外条項があり、親の転勤でミュンヘン近郊に家族で住むことになれば加入できるが、かなり稀なケースだろう。過去には“抜け道”の使用も容認されていたが、最近は取り締まりが厳しくなっている。
中学生・高校生を狙うのなら、この問題をどう解決するのか? バイエルンは“短期留学”の活用を考えている。
「たとえば夏休みや冬休みにバイエルンの育成部の練習に招待し、日本と欧州のサッカーそのものの差や違いを肌で感じてもらう。そこで得たものを日本に持ち帰ってもらい、成長のために継続してさらに高みを目指して練習に取り組んでもらう。
中高生年代で交流すると、言語を勉強しなきゃ、文化の違いってなんだろう、この国のサッカーはどんなスタイルだろう、サッカーとは何だろう、と自分自身で考えられる。気づきは早いほどいい。そして18歳になったときに力がついていたら、バイエルンに正式に来てもらう。すでにFCダラスとそういう取り組みを始めています」
アメリカのクラブと結んだ強固な提携。
2018年2月、バイエルンはメジャーリーグサッカー(MLS)のFCダラスと提携を結んだ。その3カ月後、ダラス所属のDFクリス・リチャーズ(当時18歳)ら2選手がバイエルンU19の練習に10日間参加した。
バイエルンは身長188cmのリチャーズを評価し、同年7月、1年間のローンでバイエルンU-19に呼び寄せた。リチャーズは期待通りの成長を見せ、2019年1月、移籍金150万ドルでバイエルンへ完全移籍。現在バイエルンII(ドイツ3部)に所属し、今年1月にはトップの合宿に参加した。
また、リチャーズの完全移籍と同じタイミングで、バイエルンはMLSのレアル・ソルトレイクからMFテイラー・ブース(当時17歳。アメリカとイタリアの二重国籍)を獲得した。バイエルンU-19の主力として“ユース版CL”(UEFAユースリーグ)で大活躍し、トッテナムがリストアップした逸材だ。
FCダラスから10代の選手が定期的にバイエルンに“短期留学”しており、彼らに続く選手がどんどん出てくるだろう。