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バイエルンが頼った敏腕スカウト。
川田尚弘が日本で中高生を探す理由。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2020/06/17 11:30
バイエルンがどこにも負けないクラブを目指す以上、どこにもいない選手を自分たちで教育する必要があるのだ。
バイエルンでの即戦力は現実的ではない。
「ハノーファーやケルンのスカウトのときは、すぐに活躍でき、かつヨーロッパで高みを目指している選手を探していました。しかしバイエルンでは事情が違う。すべてのポジションに世界のトップクラスがそろっており、日本からいきなりそこに割って入るのは現実的にはそう簡単ではない。
そこでバイエルンは中学生と高校生年代に注目している。また、私は大学の教員として教鞭を執っており、大学サッカーとの関わりもあるため大学生選手も推薦しています。年齢的にやや厳しいという見解をもらっていますが、ケースによっては大学生も柔軟に対応していくことになると思います」
バイエルンにとって参考事例になっているのが、2011年の宇佐美貴史(当時19歳)の獲得だ。即戦力と期待されて第2節でデビューを飾ったが、守備面などに課題があり、1年で退団となってしまった。
バイエルンと日本のレベル差を考えると、いきなり主力になるのを望むのは酷だ。そこで新たな視点での方針を打ち出した。
完成品ができるのを待つのではなく、自分たちで育成の最後の仕上げをする――。
選手権やユース世代の試合をチェック。
ヨーロッパのリーグでは引き続き“トップ人材”を探しつつ、アジアや北中米といったセカンドグループの国に対しては「育成して仕上げる」という方針を見出したのだ。
川田はブローザマーと共に、今年1月の高校選手権やゼロックススーパーカップの前座で行われた横浜F・マリノスユース対日本高校サッカー選抜をチェックした。
「バイエルン側も『日本の選手には大きなポテンシャルを感じる。問題はこれからの経験』と言っていました」