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選手も賛否両論のプレミア再開案。
「実験用マウス」扱いとの声も。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/05/22 19:00

選手も賛否両論のプレミア再開案。「実験用マウス」扱いとの声も。<Number Web> photograph by Getty Images

サッカーボールにも消毒液。プレミア再開に向けての練習は徹底管理の中で行われている。

19クラブの感染率は約0.8%。

 ブンデス再開に勇気を得たプレミア勢にとっては、第1フェーズの開始初日に出た検査結果も前向きな材料となった。

 対象となった19クラブ(検査日が遅かったノリッジを除く)の選手とチーム関係者の計748名のうち、陽性反応は6名。約0.8%の感染率はドイツで練習が再開された当初のブンデスリーガ(1、2部)の0.6%と大差なしと理解されている。

 ならばイングランド国内も「いざプレミア再開」と盛り上がっているかというと、これがそうでもない。

 新型コロナウイルスとの戦いは目に見えない強敵との厳しい長期戦の様相を呈している。積極的に攻めたいところだが、慎重にならざるを得ない理由も存在するのだ。

 例えば、ドイツでのリーグ再開に対する反応には、英国は新型コロナウイルスに対する“戦況”の面で大差があるとの指摘がある。

 練習開始初日に国内で記録された感染による死者数は545人。70人だったドイツとは、いまだに8倍近い開きがある。筆者が住むベッドフォード・パークという西ロンドンの一区域でも、5月に入った時点で、日本風に表現すれば東京ドーム2個分ほどのエリアで、3名の死亡が報告されていた。

 感染拡大が収束方向にある点は同じでも、まだまだドイツとは状況が違う。

一般社会の感染率よりも高い。

 第1フェーズ突入には、選手たちの間でも賛否両論がある。

 クリスタルパレスのアンドロス・タウンゼントが、消毒も行き届いたクラブの練習施設を「国内で最も安全な職場」と呼べば、トッテナムからニューカッスルにレンタル移籍中のダニー・ローズは、7月までレストランや美容院も開かない国内で次はコンタクト有りの練習が想定される選手の立場を、「実験用マウス」にたとえているという具合だ。

 初回の検査結果にも同じことが言える。

 0.8%という数字は、約0.25%とされる一般社会における感染率よりも明らかに高い。選手1名、スタッフ2名に陽性反応が出たワトフォードでは、第1フェーズ開始に反対の姿勢を見せていたキャプテン、トロイ・ディーニーの不安が的中した格好でもある。

 このベテランFWが、まだ生後5カ月で呼吸器系の問題を抱える息子を持つ父親として、自宅にウイルスを持ち帰ってしまう事態を避けたがるのは当然だ。

【次ページ】 カンテは2日目に練習取り止め。

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