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モウリーニョの毒とリアリズムと、
ロマンチックなインテル3冠の結末。
posted2020/05/22 15:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
今日5月22日、インテルの元会長マッシモ・モラッティは、マドリードの名店『エル・ボティン』のゲストルームを借り切る予約を入れていた。
トッテナムのジョゼ・モウリーニョ監督を招待していた。
レストランの招待リストには、名将の他にもインテルの副会長ハビエル・サネッティやクラブOBのディエゴ・ミリート、解説者エステバン・カンビアッソなど、多士済々の名が30人ほど並んでいた。
しかし、残念なことに宴の予約はコロナ禍によってキャンセルされてしまった。
「彼らとの再会は先延ばしだ」と、5月16日に75歳の誕生日を迎えたモラッティは伊紙に明かしている。本来なら「偉業の10周年を祝いたかったのだ」が……。
10年前の今日、2010年5月22日。マドリードでのCLファイナルに臨んだインテルは、2-0でバイエルンを下し、欧州の頂点に立った。
イタリアのクラブとして初めてコッパ・イタリアとスクデット、CLを同年制覇する偉業“トリプレーテ(3冠)”が完遂された夜だった。
モウも会長もサネッティも涙。
10年経っても、思い出す。
試合終了後のグラウンドで、主将サネッティを始め歴戦の勇士たちが泣いていた。
指揮官モウリーニョも会長モラッティも、感極まったインテルの男たちは、大粒の涙を流して、男泣きに泣いていた。
「気持ちの面で言えばカンプ・ノウでバルセロナとの準決勝に勝った時点で、我々の大会優勝は決まったも同然だった」(モラッティ元会長)
確かに、2009-10シーズンにおけるCLの大会ハイライトは、前年王者バルセロナとのセミファイナルだろう。
グアルディオラ体制のバルサは、新時代のポゼッション・サッカーでセンセーションを巻き起こし、世界を魅了した善玉チームだった。
一方で、徹底した実利主義で全方位に敵を作りながら結果を出していくモウリーニョのチームは、格好の悪玉ヒール役と言えた。セミファイナルは事実上の決勝戦だった。