プレミアリーグの時間BACK NUMBER
選手も賛否両論のプレミア再開案。
「実験用マウス」扱いとの声も。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/05/22 19:00
サッカーボールにも消毒液。プレミア再開に向けての練習は徹底管理の中で行われている。
ブンデス再開を120万人が視聴。
本格的な練習が始まるのは、ソーシャル・ディスタンスの制約から解放され、タックルなどの接触が許されるようになる第2フェーズになってからだ。その詳細は、5月26日のリーグ会合で話し合われることになっている。とはいえ、第1フェーズの実行がなければ次フェーズへの移行もないのだから、プレミアの今季再開に向けての大きな第一歩だ。
時を同じくして、大陸側のドイツからはブンデスリーガ再開という吉報ももたらされた。2015年から放映権を持つ『BTスポーツ』によると、プレミア中継と比べても遜色のない「120万人がドルトムント対シャルケの中継にテレビのチャンネルを合わせた」とか。
5月16、17日の週末に開催された今季ブンデスリーガの第26節は、英国内でも概ね「成功」と受け止められた。
それでも、普段のテレビ観戦とは別物の体験ではあった。無観客の光景は対戦カードによらずスタンドが埋まるプレミアの試合中継では、より異常に感じられることだろう。
世界中で最も観戦されているイングランドのトップリーグは、トップクラスの監督と選手たちが一大エンターテイメントとしての「ボディ」だとすれば、スクリーンを通しても伝わるスタジアムの熱気を生み出すファンが「ソウル」のようなもの。
静かなブンデス中継を眺めながら、そう感じた。
観客を入れた開催は1年先まで……。
しかし、数万人の観客を集める試合開催など1年先まで不可能だとする見方が強まっているのがイングランドの現状だ。
無観客試合が唯一の再開手段と認識しながらルールダービーを観ていると、「ボディ」のクオリティは変わらないとも思えた。
ドルトムント大勝の口火を切ったアーリング・ハーランドのゴールには「やっぱり、乗っている19歳は違う」と痛感。翌日にバイエルン・ミュンヘンがウニオン・ベルリンを無難に下した一戦では、余裕のPKを決めたロベルト・レバンドフスキが「さすがの貫禄」を感じさせた。
通常ベンチ前で叫ぶ監督の声に聞こえないふりをする選手もいるが、スタンドのノイズがないピッチ上での反応をチェックする新たな楽しみもあった。
6月の再開を目指すプレミアも、観衆なしでは大スペクタクルになり得ないにしても、トップレベルのサッカーはサッカーで、トップリーグの試合は試合だ。