プレミアリーグの時間BACK NUMBER
選手も賛否両論のプレミア再開案。
「実験用マウス」扱いとの声も。
posted2020/05/22 19:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
5月19日、前回のコラムで触れた「プロジェクト・リスタート」が実行に移された。
今季のプレミアリーグに参戦する20クラブは、前日の会合(テレカンファレンス)で第1フェーズのスタートに満場一致で合意。英国がロックダウンに入った3月後半以来、個人練習での立ち入りすら許されなかったケースもある各クラブ練習場で、トレーニングが再開されることになったのだ。
ただし、あくまでも第1フェーズであり、4~5名の少人数グループ制が前提の練習は、本来のチーム練習とはほど遠い。
欧州で最多3万5000人を超す人々が新型コロナウイルスで命を落としている英国では、5月10日に外出規制緩和の方針が発表されたあとも、準ロックダウン状態が続いている。
医療従事者など、いわゆる“キー・ワーカー”以外でもテレワークが難しい場合は電車やバスでの通勤が許され、一緒に住む家族や同居人以外とも、屋外で1名となら会うことができるようになったが、引き続き“他人”とは最低2mの距離を空けなければならない。
この「ソーシャル・ディスタンス」は選手たちにも適用される。当初は特例的免除も予想されたが、英国政府はプロスポーツ界のエリートも特別扱いはしない姿勢を固めた。
基本的な練習は1時間15分が上限。
従って、普段は意外と多い相乗りでの練習場通いも許されない。
「マイカー通勤」の選手たちはロッカールームを使わなくて済むよう、事前に配付された練習着姿でハンドルを握っている。また「出勤時刻」はグループ毎に異なる。クラブハウスの駐車場では「2台分のスペースを空けること」が新ルール。体温測定と携帯アプリでの問診回答は新たな日課だ。
以前は屋内で行うクラブが多かった練習前のストレッチなどは、ジムのような密室ではなくグラウンドで行われる。肝心の練習メニューもランニング、パス、シュートなどの基本的なもので、1時間15分が上限。練習後はシャワーもカフェテリアでのランチもなし。マッサージを含む治療も最長で1人15分間まで。
同じく、よくインタビュー開始を待たされる理由となっていたヨガのセッションなどが行われるはずもなく、選手たちは練習着のまま車で帰途に就く。